本文へ移動
朝日建設株式会社 本社地図
0
5
1
7
9
5

2003年2月

洗面台の高さに学んだ

 4月1日のオープンを目指して、あさひホームの建設が急ピッチで進んでいる。
 昨年の4月から始まったこのホームの設計では、介護施設ということから検討すべき多くの事項があり、運営会社になる予定のO社の社長や担当者も参加して設計打ち合せを行った。しかしO社の事情から、5月に当社の子会社が直接運営することになった。
 そこで、茨城県下館市の特別養護老人ホームで実際に介護に携わりながら、全国各地で介護セミナーを行っているケアワーカーの青山さんに設計のアドバイスを受けることにした。青山さんからは、浴槽のサイズ、デイサービススペースでの畳コーナーの位置、事務室のオープン化、グループホームでのトイレの配置など貴重なアドバイスをたくさん頂いた。
 青山さんは、洗面器の高さについても設計事務所の担当者と打ち合わせていた。一般的には、健常者用の洗面器の高さは72cmくらいだが、青山さんは車椅子の人が使い易い高さとして60cmを指示していた。70cmでは手のひらより肘が下になるため、蛇口から受けた水やお湯が袖口から肘に下がってくる。そこで手のひらより肘が上に来る高さとして60cmを推奨したのだった。
 10月から朝日ケアの職員の採用活動を始めたが、内定者の一人の阿部さんは、長年特養ホームで介護の仕事をし、自ら「富山21世紀の老人ケアを考える会」の代表を務める女性である。この阿部さんが、「55cmの高さで洗面器を取り付けている施設を見学したことがあるが、使い易そうだった」と言う。私が調べた兵庫県の施設でも、初めの頃の施設では60?にしていたが、新しい施設では全て55cmだと言う。青山さんの60cmにするか、阿部さんの55cmにするか、私は迷ってしまった。
 そこで、昨年12月に開催した20人参加の初めての内定者ミーティングで、私は車椅子用の洗面器の高さを60?にすべきか55cmにすべきかと問題提起した。洗面器の下に足が入ったほうが安心されるという意見もあれば、足が入らなくても低い方が腕が濡れなくて良いという意見もあり、結論は出せなかった。
 しかし、ミーティングの後の懇親会で酒を飲みながらハット気がついた。車椅子のお年寄りは、体の大きさや麻痺の度合いは人それぞれ。60cmが良い人もいれば55cmがピッタリの人もいるだろう。だったら洗面器は1箇所ではないのだから、両方の高さの洗面器を取り付ければ良いのではないかと。皆さんに諮ったら拍手で賛成。
 車椅子の利用者が多いと予想されるショートステイの個室内の洗面器は、9部屋の内4部屋を60?、5部屋を55cmとした。車椅子の利用者が少ないと予想されるグループホームの洗面器は、70cmを2台、60?と55cmを各1台とした。そして、デイサービスでは、70cmを1台、60?を2台、55cmを1台とした。
 「白か黒か」、「右か左か」と決着をつけたがり、「正解は一つ」と思いこむのは私に限ったことではなく、多くの日本人に見受けられる様に思う。でも、あさひホームの運営理念の一つである「利用者の立場に立ったケア」を考えれば、出来るだけ柔軟に対応するというのは当然のはずだったのだ。
 洗面器の後も、食器を陶器にするかメラミン樹脂にするか、跳ね上げ式手すりを全てのトイレにつけるのか、ベッドの高さは低すぎないか、などなど、業者とスタッフで、あるいはスタッフ同士で喧喧諤諤の議論がなされている。私は、「議論はおおいに結構。でも、正解はひとつとは限らない。頭を柔軟にして考える様に」とアドバイスしている。
 今回のあさひホームの建設プロジェクトにおいて、私もずいぶん勉強させられた。
 

TOPへ戻る