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2003年9月

あさひホームで出会った話−4

 5月号のこのコラムで登場願ったTさん(92歳女性)は開所時からのショートステイ利用者だが、その後長男ご夫婦が面会に来られたときにとても嬉しい話を伺った。
 Tさんは小さい頃から外に出かけたり他人と会話したりすることがあまり好きではなく、町内の会合があっても息子さんに出席させていた。また、歌を歌うということも無かったのが、ある夜、夢で歌を口ずさんでいるのでビックリした。ホームで歌った歌のようで、テープレコーダーで録音してお孫さんに聞かせたと話された。
 8月31日の納涼祭で盆踊りがあった。デイサービスの利用者やスタッフ、さらには私が ボランティアをお願いした中国の留学生二人もおわらの踊りの輪に入って踊っていた。そこへTさんがスタッフの女性に車椅子を押してもらいながら踊りの輪に加わり、上機嫌で手を左右に振りだした。終わってからこのスタッフに聞いたら、「私は踊りは好きではない。自分の子供達は踊りが好きだけど」と話していたTさんが、踊りを見ているうちに「踊りたい」と言い出し、車椅子で踊り終えたら「何で子供達が踊りがすきなのか分かった」と話したとのこと。これも何とも嬉しい話だった。
 Tさんは、ホームに来られた頃はスタッフに車椅子を押してもらうばかりであった。それが最近では、車椅子の駆動輪の外側についているハンドリム(駆動輪握り)を自分でまわして前進したり、フットレスト(足のせ)から足をはずして、足を床につけて進んだりしている光景を見かけるようになった。さらに、最近はショートステイの廊下の手すりにつながりながら歩いてもいるとスタッフから聞いた。おそらく廊下が広くつくってあり、歩き回れるスペースがあるからだと思う。改めて設計の重要性を認識させられた。
 9月から新しく介護長として勤めている向野さんから、Tさんのご家族が、「まさかこんなに動けるようになるなんて思ってもみなかった」、「家ではもっと近いところにトイレを置いていても自分でできなかった。ここではトイレにも行けるようになりありがたい」、「輪投げをしているなんて信じられない」、「最近はどっちが本当の家か分からなくなっている。こちらが楽しいようだ」と話されたと報告してくれた。そして「"熱海の海岸"をこんなにいい顔をして歌って、ここにいると楽しいのですね」とも話されたという。
 この原稿を書いている途中、夕方ホームを訪れTさんたちとテレビで大相撲を観た後、"熱海の海岸"のことを思い出し、Tさんに歌ってくれるように頼んだ。そうしたらニコニコしながら「金色夜叉」をハスキーな声で歌いだした。2題目となり3題目になって、もうおしまいかと思ったら4題目も歌った。
 インターネットで検索したら、「金色夜叉」は7題目まであり、私が聞いたのは間違いなく以下の4題だった。私もTさんの歌声を真剣に聞いていたから確認できたのではある。

 1題目:熱海の海岸 散歩する 貫一お宮の 二人連れ 共に歩むも 今日限り 共に語るも 今日限り 

 5題目:宮さん必ず 来年の 今月今夜の この月は 僕の涙で くもらせて 見せるよ男子の 意地から

 6題目:ダイヤモンドに 目がくれて 乗ってはならぬ 玉の輿 人は身持ちが 第一よ お金はこの世のまわりもの

 7題目:恋に破れし 貫一は すがるお宮を つきはなし 無念の涙 はらはらと 残る渚に 月淋し 
 
 

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