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朝日建設株式会社 本社地図
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2007年11月

介護事業と公共事業の類似性

  私は平成14年6月に子会社の?朝日ケアを設立し、平成15年4月から老人介護事業所「あさひホーム」で、デイサービス、ショートステイ、グループホームの介護サービス事業を始めた。昨年の7月には、土木・舗装・電気工事の当社が、元請として病院の建物を用途変更(コンバージョン)する建築工事を行い、「あさひホーム吉作」として二つ目の事業所を開業した。
  老人介護事業を始めて4年8ヶ月たった今、採算は「非常に厳しい」のひと言に尽きる。昨年5月末の第4期決算で初めて170万円の経常黒字となった。これは、当初伸び悩んでいたデイサービスの利用率が開業3年目にして70%弱になったためだ。しかし、やっと黒字になった収支が、今年5月末の第5期決算では再び経常赤字に転落した。
  不採算の原因の一つは、誰もが感心する建物のグレードの高さだ。建物のグレードを上げて建設費を大きくし、その結果、減価償却費や親会社である当社への返済利息負担を大きくした責任は私にある。しかし、不採算のもっと重要な原因は介護保険事業の構造にあると最近つくづく思うようになった。
  収入の大部分は介護保険法で全国一律に定められたサービス料収入(利用者が1割、保険から9割)であり、単価が一律ならば収入を増やすには数量、即ち利用者を増やすしかない。あさひホームの評判を高め、より多くのお年寄りに利用していただけるよう、介護スタッフのスキルアップを基にサービスの向上に努めることは当然である。しかし、単価については、老人介護事業所が独自に徴収できるのは食費や居住費であるが、地域の相場を大きく上回ることはできない。収入の大部分を占めるサービス料の単価が法律で一律に決められていることが、グレードの高い施設でレベルの高い介護サービスをすればするほど、儲からないどころか赤字になるという構造なのだ。
  この点公共事業では、設計書通りに建設物を造り、完成検査に合格した上で発注者に引き渡されるので、建設物自体の品質には介護事業のサービスや施設ほどの大きな差は無いと言えるだろう。でも、本来は建設物を引き渡すまでの、材料購入、業者の手配、品質管理、安全管理、工程管理、近隣対応などの様々なプロセスが建設業の製品であり、この観点からは、施工プロセスにおける建設業者の質の差はとても大きい。しかし、金額だけで落札者を決めるこれまでの入札制度ではそれは反映されない。介護サービスの質を見ないで、また、施工プロセスの質を見ないで、利用者数や落札金額という数字だけで事業者を判断するという点で、介護事業も公共事業も似ていると思うのである。
  さて、昨年4月に介護保険が改正された。政府はもっともらしい改正理由を述べるが、介護保険財政をにらんで総費用の伸びを抑えようとしたのは明白だ。法改正の思惑通り、朝日ケアの収入は減った。
 一方公共事業においては、政府の建設投資額は平成7年度(1995年度)の35兆6千億円をピークに減少に転じ、財政再建という「錦の御旗」の下、平成19年度(2007年度)見通しでは、17兆1千億円と半分以下になってしまった。介護保険事業においては介護保険財政の健全化の名の下に支出を押さえ、公共事業においては、国家の財政再建の名の下に事業費を削減するという同じパターンだ
 また、公共事業をめぐる汚職事件をキッカケに、競争性を重視した一般競争入札が導入されたが、これがダンピングを生み、指名競争入札ではある程度排除できていた、許可を持っているだけで施工能力が全く無い不良不適格業者の参入と受注を許すことになった。建設業者としての誇りも使命感も持たない経営者がひたすら利益のみを追い求める姿は、一連の不正問題で介護事業から撤退したコムスンの経営者の姿と重なる。
 さらに、公共事業では工事規模などによって有資格者の配置や人数が決められているが、介護事業でも、利用者数に対する介護スタッフの人数が決められ、また、次々に新たな有資格者や講習受講終了者の配置が義務付けられる。作成する書類も煩雑だ。両者とも事業者の実態を無視した過剰な縛りが多々あり、ここでも質を問わずに量だけで業者を判断するという、行政の安易な姿勢を感じる。
 介護事業でも公共事業でも、類似する多くの問題を、まともな業者と強い権限を持っている役所が真のパートナーとなって一緒に解決することが、地域住民の幸せに直結すると考える。  
 

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