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2008年2月

一般競争入札とハンドボール

 生活基盤である道路、橋、学校などの社会資本は、公共事業として役所が計画して発注し、 建設業者が受注して施工することで整備される。それを納税者である住民が使うのであり、公共事業を考えるときには、住民、発注者、施工者の3者の関係を考えなければならない。今、公共事業における住民、発注者、施工者の3者の関係は、異常な状態になっている。「中東の笛」で一躍脚光を浴びた、ハンドボールオリンピックアジア予選のやり直し騒動よりもなお酷い状態であると私は思う。
 公共事業で、汚職事件をキッカケに競争性を重視した一般競争入札が導入されたのは、ハンドボール競技の世界で、協会とチームの癒着が発覚し、それを防ぐためということで、協会に登録しさえしていれば大会に参加できるようになったと例えることが出来る。
 この結果、練習もしなければルールも理解せず、ただ勝ちさえすれば良いというチームが大会に参加することになった。そして、選手人数は7人なのに9人で出場したり、禁止薬物で体力を増強した選手を使ったりするチームが、反則を繰り返し次々に得点を重ねていく。しかし、審判は巧妙に反則をごまかされたり、審判自身もルールをシッカリ知らなかったりで得点を認める。退場させると文句を言われるからと、逆に反則選手をかばいさえする審判までいる始末。観客は、点数が入いりさえすれば満足する。主催者の協会も、観客が喜べば良いという態度で、不良チームを勝ちとしていく。まともなチームは、ハンドボールの将来に希望を失い解散する。

 公共事業では、建設業の許可は取っているが、技術者も機械もなく、施工管理能力も無い業者が、一般競争入札ということで新たに入札に参入し、ダンピングして受注する。発注者の財政担当者や住民、マスコミ、そして一部の政治家までが、落札率が80%、70%になったことで、建設業者はこれまで20%、30%儲けていたのだという、なんとも単純でこっけいな論法で建設業界を批判する。まるで、建設業者は儲けてはいけないと言わんばかりだ。ダンピングのしわ寄せは、工事の品質、下請や材料業者への過酷な指値となり、労災事故も増加する。まともな建設技術者は誇りを失って建設業界から去り、まともな経営者は廃業を考える。しかし、銀行からの借金を考えると、止めるに止められないという状況である。

 こうして、悪貨が良貨を駆逐する中で建設業は衰退し、良質な社会資本は形成されず、地域は衰退し、地域間格差が増大する。

 私は、昨年5月8日に開催された「三方良しの公共事業改革」フォーラムでの宣言にある、「発注者と施工者が、社会に最大の利益をもたらすために、良いものをより早く提供することを目指して、一致協力し、全力を挙げて公共事業に取り組む。これによって、住民、発注者、施工者の三方に利益をもたらし、ひいては財政の健全化にも貢献する。」に共感し、出口の見えないトンネルだと思っていた建設業の将来に、かすかな明かりを見出した。

 公共事業のお金の出所は税金である。その意味では大儲けしようとは思わない。しかし、野放し状態のダンピングでまともな建設業者が適正な利益を上げられず、業界が疲弊していくようでは、そのつけは最終的には納税者である住民に回るのである。発注者、施工者、住民の冷静な議論が必要であるが、先ずは、発注者は「発注してやっている」というお上意識を捨て、施工者は「泣く子と地頭には勝てぬ」という被害者意識、請け負け意識をなくし、甲(発注者)と乙(施工者)との上下関係から、両者が共に住民を意識する真のパートナー関係の構築に歩みださなければいけない。

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