3月6日の日曜日、総曲輪のほとり座で「禁じられた遊び」を観ました。
映画は第二次世界大戦下の1940年6月、ドイツ軍から逃げるためパリから車や馬車で逃げてくる多くのフランス人の行列、それを機銃掃射するナチスドイツの戦闘機の場面から始まります。映画のチラシに書かれているあらすじは「第二次世界大戦中のフランス。ドイツ軍によるパリ侵攻からの避難途中、5歳の少女ポーレットは爆撃により両親と愛犬を亡くしてしまう。ひとりはぐれて、子犬の亡きがらを抱きながら彷徨ううち、11歳の農民少年ミシェルと出会う。ミシェルから死んだら土に埋めるのだ、と知らされたポーレットは子犬を埋め、お墓を作り十字架を供える。それからは、お墓を作り十字架を供える遊びがすっかり気に入り、この秘密の遊びのために二人は、十字架を集め始め、ついに教会や霊柩車からも十字架を持ち出すようになってしまうのだった・・・・。」
映画の冒頭の空爆するナチスドイツの戦闘機と逃げ惑う人々のシーンは、2月24日にロシアのプーチン大統領がウクライナで全面戦争に踏み込み、その後日増しに戦闘が激しくなったウクライナの悲惨な状況を報道するニュース映像と否応なく重なりました。ロケット弾が撃ち込まれて炎をあげながら崩れ落ちる集合住宅、黒煙を上げて燃える戦車や乗用車、幼い子供を抱きかかえた母親が子供二人を失ったと嘆き悲しむ姿、ポーランドへ逃れるスーツケースを抱えた人々。
ウクライナ検察当局は19日、死亡した子どもは少なくとも112人、怪我した子どもは140人以上と伝え、「ロシア軍に包囲されているウクライナ南東部マリウポリ市の当局は20日、住民400人が避難していた芸術学校に、ロシア軍が19日に爆弾を投下したと発表した。避難していたのは主に女性や子ども、老人だという。市当局は、建物が破壊され、多くの住民ががれきの下敷きになっているとしている。」というニュースに、「禁じられた遊び」の1940年から82年後にこのような戦争が現実として起きている事実に、平和な日本に暮らす私には身の危険は感じていなくても心を寄せなければいけないと思い、毎年年末に寄付をしている「国境なき医師団」と「国連UNHCR協会」に「ウクライナ支援」として追加の寄付を行いました。
さて、「禁じられた遊び」で、ミシェルは嘘をつきます。馬に蹴られて寝込んでいたミシェルの兄が亡くなり、ミシェルは父が用意した霊柩車から飾りの十字架を盗むのです。十字架が消えていることに父が気づいてミシェルを問い詰めると、ミシェルは隣人がやったのだと嘘をついて言い逃れをしました。 映画から現実に戻すと、プーチン政権はたくさんの嘘をついています。3月2日の日経新聞に“プーチン政権が重ねた「嘘」”という記事が載っていました。
① プーチン政権:ロシア系住民が多い東部でウクライナ軍がジェノサイド(集団殺害)
➡ 欧米・ウクライナ:国際機関の指摘なし。1.4万人死亡の東部紛争はロシアの軍事介入が原因。軍事侵攻を正当化するために作られた恐れがある。
② ウクライナ軍が東部住民の攻撃を計画
➡ ウクライナ軍は防衛目的で戦闘を展開。東部の親ロ派が「攻撃迫る」と避難を呼びかけた動画は発表2日前に作成。
③ ロシア系住民を保護するための軍事作戦
➡ ウクライナがロシア語を話す住民を迫害した事実や国際機関の指摘なし。侵攻でロシア軍にも多数の死者。
④ ウクライナが核配備を計画
➡ 1994年、ウクライナはロシアと米英との「ブタペスト覚書」で安全の保証と引き換えに核を廃棄。この覚書は14年のクリミア併合やウクライナ東部侵攻でほごにした。
⑤ ロシアは軍事施設しか攻撃していない
➡ 住宅や幼稚園に砲撃。子どもを含む民間人の死傷者多数。病院への空爆も「病院は兵士が使っていた」などとして、医療機関への攻撃を禁じた国際法違反にはあたらないとの立場を貫く。
⑥ 侵攻する意図はない
➡ 事前に入念に計画か。「軍事作戦」発表前に複数の都市を攻撃。
⑦ 欧米が紛争に向かわせている
➡ 欧米は外交解決を訴え。侵攻を受けドイツなどは武器供与に方針転換
⑧ NATOが東に拡大しないとの口約束を破り、ロシアの脅威に
➡ NATOは防衛目的の同盟。ウクライナなどを念頭にした不拡大の約束があったかどうかに疑問。
この記事を読む限り、プーチン政権の嘘は、ミシェルのようにとっさについた嘘ではなく、ロシアの戦争を正当化するためにすぐばれるような噓を悪知恵を働かせて作った嘘だと思いました。
映画の最後は、多くの人であふれる駅に連れてこられたポーレットは、人ごみの中から「ミシェル!」と呼ぶ声が聞こえて、その声にハッとしたポーレットは涙して「ミシェル!」「ミシェル!」と叫びながら探しに行きます。しかし人違いで、彼はいませんでした。ポーレットはママとミシェルの名を泣き叫びながら走り出し、雑踏の中へと姿を消していくのです。
このシーンに涙し、ウクライナの惨状に涙している私です。
先月のコラムは、~早く絶版になってほしい~#駄言辞典と題して、第1章“01 実際にあった「駄言」リスト”に載った幾つかの駄言を紹介し私の感想を記しました。今月は第2章“02 なぜ『駄言』が生まれるか”でのキーパーソン6名にインタビューした内容で、印象深かったコメントと私の感想を述べます。
6名のキーパーソンは、スプツニ子!(アーティスト/東京芸術大学デザイン科准教授)、出口治朗(立命館アジア太平洋大学学長)、及川美紀(ポーラ社長)、杉山文野(NPO法人東京レインボープライド共同代表理事)、野田聖子(自由民主党幹事長代行)、青野慶久(サイボウズ社長)です。
まずスプツ二子さんの「美人≠頭がいい」⁉は、日本の大企業の役職ある男性から、「スプツニ子さんは美人だから、こんなに頭が良くて大学の先生をされているなんて思っていませんでしたよ!」と言われ、「その発言、褒めているつもりでも全然ダメですよ」と笑顔で返したが、意味を理解してもらえたか分からなかった、という話です。美人と思うかどうかはかなり主観的なものですし、女性でも男性でも、頭の良い人というか知的な人は良い顔をしていると思います。また「美人≠頭がいい」が正しければ、大学の先生は、美人でもハンサムでもない人がなっているということにもなってしまい、当然ながら間違っていると思いました。
出口治朗さんは、「歴史的に見ると、実は日本は女性が強い国」であるとして、日本の天皇家の祖先とされるのは女性の天照(あまてらす)であり、日本という国号、天皇という称号を作ったのは女性天皇の持統天皇であり、江戸時代にも、6代家宣の妻、天英院の鶴の一声で8代吉宗が決まったとのことです。明治時代に国民国家をつくるために朱子学のロジックを借りて作られたものが男尊女卑という出口さんの説は、初耳でした。さらに、男性が育児休業を取得すべき理由は、赤ちゃんをお世話することでオキシトシンというホルモンが分泌し、家族愛を持った父親になるためであり、少なくとも1か月くらいは休んで、育児を主体的に担うべきだとの話に共感して、2月19日の経営戦略会議で、2月14日に第一子の女の子が生まれた電気工事部のKさんが1か月の育児休業を取るよう、電気工事部長に指示しました。
及川美紀さんのインタビューでは、他社の男性役員からよく聞く「うちの会社の女性たちは課長という仕事にどうも魅力を感じていないらしい」は、言い換えれば「当社は女性が管理職になれる環境をつくっていません」と言っているのと同じこと、そして「女性は・・・・」とくくることに違和感を持つとして、「女性には管理職になることに不安を持つ人が多い」というのであれば分かると話しています。女性社員の絶対数が少ない当社ですが、男女の比率は関係なく女性管理職になれる環境をつくっていかなければいけないと思いました。
トランスジェンダーである杉山文野さんは、「男らしさ」「女らしさ」「トランスジェンダーらしさ」の押しつけはいらない。欲しいのは「自分らしさ」と話し、駄言の裏側には何らかの偏見があるはずで、一番いけないのは、その偏見に気づかないことであり、「自分は大丈夫」と思わないのが第一歩、という言葉には、私自身、反省させられました。
野田聖子さんは、女性と政治にまつわる3つの駄言として、「女性政策」「子育てと仕事の両立は?」という質問、そして「女性活躍」という言葉をあげています。 「女性政策」という言葉は「すべての国民の政策」なのに、頭に「女性」とつけられ矮小化され、男性議員がそれを口実に「俺には関係ない」と言って仲間に入ってくれないのが実態とのこと。
「子育てと仕事の両立は?」という質問では、役職に就いた女性にのみ聞かれる質問で、子育ては女性がするもので、仕事というオプションがついたらその両立が果たしてできるかと周りは思ってしまうのだろうということです。当社の総務部には、保育園児や小学生のお子さんを育てながら働く二人の女性がいますが、二人とも時短勤務しながらしっかり仕事をしています。
「女性活躍」については、37歳で郵政大臣になったとき、男性の先輩議員から「これで郵政省も軽くなったな」「スカートを履いてりゃ、大臣になれるんだな」と言われたときには、さすがに腹が立ったと話しています。こんなにレベルの低い男性議員がいるのかと情けなくなり、先日観た映画「香川1区」の立憲民主党の小川淳也議員とは雲泥の差の自民党議員だと思いました。
青野慶久さんに、仕事内容に関する古いステレオタイプについて聞いたところ、「プログラミングなんて自分でしちゃダメだよ」という人たちは「ソフトウェアが生み出す付加価値」を理解しておらず、「世界を変えていくのはソフトウェアなんだから、ソフトウェアは自分たちで作らないと」という発想が大事なんです、と答えています。そして「これから20~30年の間、古い価値観から抜け出すことができなければ、日本という国はさらにズブズブと沈没していくと思います」とも言っています。私はどんな業種においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組まない企業は確実に落ちこぼれていくと思っています。当社における喫緊の課題です。
以上、非常に経営に役立つ#駄言辞典第2章でした。
私は毎朝NHKラジオ第1放送を犬の散歩中に聴いています。その中に「著者からの手紙」というコーナーのある日があり、昨年12月中旬に、本の帯に「家事、手伝うよ」と書かれた表題の本が紹介されました。この本は日経新聞が昨年11月の紙面で、「心を打つ『名言』があるように、心をくじく『駄言』(だげん)もある。『#駄言辞典』を付けて、駄言にまつわるエピソードをつぶやいてください。まとめたものは、絶版を目指して出版します。」と案内した結果出版された本ですが、この放送での「家事、手伝うよ」がなぜ心をくじく『駄言』なんだろうかピンと来なくて、早速ネットで買いました。
まず【駄言・だげん】とは、「女はビジネスに向かない」のような思い込みによる発言。特に性別に基づくものが多い。相手の能力や個性を考えないステレオタイプな発言だが、言った当人には悪気が無いことも多い。」と説明があり、第一章の実際にあった「駄言」リストには、女性らしさ、キャリア・仕事能力、生活能力・家事、子育て、恋愛・結婚、男性らしさの6篇に分けて、つぶやきが書かれています。
私は性別による仕事の分担に違和感を覚える方で、私が4月に入社した昭和50年、10月に本社ビルが新築してからの社内の様子に覚えた違和感が二つありました。一つ目は女性社員が男性社員にお茶を出すことで、朝8時、10時、12時、午後3時と4回も出すのです。社員へのお茶出しに女性社員を雇っているのではないと思い、お茶が飲みたければ自分でお茶を入れて飲むように通達しました。二つ目は、便所や事務室のフロアの掃除も女性社員がやっていることでした。これもおかしいと思い、シルバー人材センターに依頼して、人材を派遣してもらうことにしました。
また、私は富山西ロータリークラブ(RC)の会員でしたが、平成9年(1907年)に分かれて富山みらいRCを設立しました。当時、富山市内の5つのRCに女性会員は一人もおらず、富山市内で最初にできた格式高いRCの会員は「女が入るのなら、俺はRCを辞める」と公言していました。しかし私は、ぜひ設立メンバーに女性を入れたいと思い、取引先の女性社長と、銀行の紹介で2人、計3人の女性に入会してもらいました。そのうちの2人は後にクラブ会長を務めましたが、現在の女性会員は11人で、富山県、石川県のクラブでは最も多い女性会員となっています。
では、駄言リストから、いくつかのコメント付きのツイッターを紹介します。
#「(家事)手伝うよ」(夫が妻に言うこのフレーズが駄言のキングなんじゃないの?当事者意識がないことがこれ以上うまく表れた言葉はない)
⇒私:妻の家事育児時間が夫の約5.5倍(内閣府平成30年版調査)とのこと。今後は妻には「手伝う」と言わないことにします。
#「男みたいな女だな」(親から言われた)
#「女性にうれしい」(グルメ番組などでヘルシーな料理を表現するやつ。健康を気にしているのは女性だけ?)
#「やっぱり服はピンクじゃないと」(娘が生まれたときに言われた。何色着てもいいよね?)
#「女のくせに生意気な」(これって普段から女は格下と思っているから出る言葉)
#「化粧もっとちゃんとしてきたら?(面接のオッサンに言われた)
#「女性は課長の隣に」(職場の飲み会で。「女性」と飲みたいなら、お金払ってプロのサービスを受けてください。部下を代用品にしないで。)
#「いざとなったら結婚すればいいもんね」(就職先が決まらない女子に向かって。)
#「女性管理職」(管理職という言葉には「男性」という意味でもあるんかな?)
#「女性が活躍する社会」(分かってなさそうな人が軽々しく使うのを聞くと「お前が言うな」と思う。)
#「女性に優しい職場」(家事や育児と両立しやすい職場は「人間にやさしい職場」)
#「おまえが男やったらよかったのに」(上司からの誉め言葉)
#「正式な商談になったら男性の担当がつくんですか?技術が分かる方と話したいのですが」(営業先でお客様に言われたこと。その男性の担当者は、私の部下ですが・・・)
⇒私:当社の女性社員のT主任やI主任は、第一線の技術者として新聞広告の紙面に登場しています。
#「君が男ならたくさんの就職口があるんだけど」(大学生の時、就活で失敗が続いたとき、教授に言われた)
#「主婦って暇でしょう?昼間、何してんの?」(家事です。昼間だけでなく夜も朝も家事してます。大中小といろんな仕事があります。ちなみに暇ではないです。)
⇒私:妻は夕方の犬の散歩もしています。
#「主人」(世の中の奥様方からブーイングを食らいそうですが、これ、使いたくない。「ご主人」て使われるのを聞くのも嫌。私、夫の下僕じゃないもん。)
⇒私:妻に話してこれからは「夫」と言ってもらいましょう。
#「そんなことしたらママに叱られるよ」(おまえ父親やん、おまえが叱れよ。)
#「嫁」(女偏に家ですよ。もう存在自体が罪悪)
⇒私:姑(しゅうと)もそうですね。女が古くなった。嬶(かかあ)もそうかな?鼻っ柱が強いから(笑)
#「男だって⁉でかした!」(私は私と夫の子を産んだのであり、それがたまたま男の子だっただけ。義理の実家のために命がけで子供を産んだんじゃないよ。)
⇒私:同じ言葉を聞いたことがあります。
#「イクメン」(普通に父親でいいのに。)
⇒私:「イクメンとは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性のこと」とあります。普通に父親と言ったのでは、この意味は伝わらないのでしょうね。そこが問題ですね。
#「女みたい」(男性に対する侮辱に使うのやめろや。侮辱される男はもちろん、女にも失礼すぎだろ。)
#「男のくせに言い訳するな」(これうちの夫が息子に怒るときに言うから、そのたびに割って入って「男女関係ないよ!」って訂正する案件。)
#「デート代は男が払うの、当たり前でしょ」(男女平等をうたう一方で、いまだにこういうところは考えを改めない女性が多い。男女平等を主張するなら、割り勘を申し出るべき。30代男性)
⇒私:女性と食事して割り勘にしたことはありません。割り勘にと言われても、全部私が払います。
長くなるので、この辺で終わりますが、面白くて、かつ自分にもこんなところがあるかもしれないと考えさせられる本です。日経BP発行で1,400円+税です。