「身の丈」発言から考えたこと

2019.11.01

萩生田光一・文科相の「身の丈」発言により、2020年度から始まる大学入学共通テストで導入される英語民間試験が延期されることになりました。

 10月24日、BSフジの番組で、萩生田文科相は英語民間試験の利用で、生徒が住む地域や家庭の経済状況によって生じる不公平感について問われたところ、「それを言ったら『あいつ予備校通っていてずるいよな』というのと同じ」と反論し、「裕福な家庭の子が回数受けてウォーミングアップできるみたいなことがもしかしたらあるのかもしれない」と述べました。そのうえで、試験本番では高3で受けた2回までの成績が大学に提供されることを踏まえ、「自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」と答えたということです。

 私は、東大生の親の年収が高いことが調査で実証されているので、経済格差に地域格差も加わった不公平感についてはもっともだと思います。また、水準の異なる7つの民間試験の評価方法にも問題が多いとされています。しかし私は、そもそも英語にそんなに力を入れなければいけないのかと思うのです。私は英語が好きですし、英語の語彙を増やして外人さんともっと上手に英語で話したいと思っており、富山経済同友会で行っている中学校での課外授業では、「土木工学、土木工事は英語ではcivil engineeringと言い、市民の工学、市民の生活を支える工学です。インフラはinfrastructureであり、下から組み立てるの意味で下部構造であり、建設するという英語のconstructは、共に(con)積み上げる(struct)からきています」などと話します。

 しかし、今月11日に高岡商業高校の2年生のクラスで行った授業では、前述の文科相の「身の丈」発言について話した後に、数学者である藤原正彦さんが、ベストセラーとなった著書「国家の品格」で小学校からの英語教育必修化を批判し、「一に国語、二に国語、三四がなくて五に算数。あとは十以下」と述べ、国語教育の充実を主張したことを紹介しました。そして藤原正彦さんが英語より国語と言うのは、日本人は国語、日本語でものを考えるからだということなので、私も生徒たちに読書の大切さを伝えようと、富山新聞のコラム「時鐘」の次の言葉を紹介しました。

 「『けさ食べたものを言ってみたまえ。君がどんな人間か当ててみせる』との言葉がある。読書に例えるとこうなる。『読んだ本を言ってみたまえ。どんな人間か当ててやろう』。本も食物も栄養になる点では同じ。よく噛んで食べよう。次の子どもの疑問が分かりやすい。『本を読んでもほとんど忘れてしまうのになぜ読むの?』。先生が答える。『毎日何を食べたか忘れても君は大きくなっているね』」。読書週間に思い出す話である。

 先日の当社の会議で、所長や専務から「今の若い社員は言葉を知らない」という嘆き節が聞かれました。聞いてみると「当たらずと雖も遠からず」とか「もっと深堀して考えろ」と言っても分からないというのです。この話を妻にしたところ、外国人に災害情報を伝える場合は、日本人に話すよりも分かりやすい言葉に言い換えて話すと良く伝わるとテレビで言っていたといいました。なるほどと思いました。言葉を多く知らない相手には、彼らが分かる言葉で説明すればよいのです。「当たらずと雖も遠からず」なら「近いけれども少し違うね」、「もっと深堀して考えろ」なら「もう少し深く考えてみよう」でどうでしょうか。「深く考える」が分からなかったら、何をか言わんやです。「何をか言わんや」の意味、分かりますよね。

 仕事におけるコミュニケーションの大切さが言われますが、言葉が通じなければコミュニケーションになりません。まずは新聞を読み、月に1冊、最低でも年に3冊は本を読みましょう。分からない言葉があったら直ぐに辞書で調べてください。脳に栄養が与えられ、しっかりコミュニケーションが取れるようになり、仕事もうまくいきます。さらに、詩や小説を読み、情緒ある日本語に接しましょう。日本人に生まれたことを感謝できるようになりますよ。

 萩生田文科相の「身の丈」発言がなかったら英語民間試験が実施され、ますます国語より英語に力が注がれ、日本人の国語力がさらに弱まることになると思うと、大臣は良いことを言ってくれたと思います。そして「身の丈」発言を高岡商業高校での課外授業の中で使い、さらにはこのコラムで社員に読書を勧められたと思うと、これまた「良い発言」だったと思うのでした。

 10月24日、BSフジの番組で、萩生田文科相は英語民間試験の利用で、生徒が住む地域や家庭の経済状況によって生じる不公平感について問われたところ、「それを言ったら『あいつ予備校通っていてずるいよな』というのと同じ」と反論し、「裕福な家庭の子が回数受けてウォーミングアップできるみたいなことがもしかしたらあるのかもしれない」と述べました。そのうえで、試験本番では高3で受けた2回までの成績が大学に提供されることを踏まえ、「自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」と答えたということです。

 私は、東大生の親の年収が高いことが調査で実証されているので、経済格差に地域格差も加わった不公平感についてはもっともだと思います。また、水準の異なる7つの民間試験の評価方法にも問題が多いとされています。しかし私は、そもそも英語にそんなに力を入れなければいけないのかと思うのです。私は英語が好きですし、英語の語彙を増やして外人さんともっと上手に英語で話したいと思っており、富山経済同友会で行っている中学校での課外授業では、「土木工学、土木工事は英語ではcivil engineeringと言い、市民の工学、市民の生活を支える工学です。インフラはinfrastructureであり、下から組み立てるの意味で下部構造であり、建設するという英語のconstructは、共に(con)積み上げる(struct)からきています」などと話します。

 しかし、今月11日に高岡商業高校の2年生のクラスで行った授業では、前述の文科相の「身の丈」発言について話した後に、数学者である藤原正彦さんが、ベストセラーとなった著書「国家の品格」で小学校からの英語教育必修化を批判し、「一に国語、二に国語、三四がなくて五に算数。あとは十以下」と述べ、国語教育の充実を主張したことを紹介しました。そして藤原正彦さんが英語より国語と言うのは、日本人は国語、日本語でものを考えるからだということなので、私も生徒たちに読書の大切さを伝えようと、富山新聞のコラム「時鐘」の次の言葉を紹介しました。

 「『けさ食べたものを言ってみたまえ。君がどんな人間か当ててみせる』との言葉がある。読書に例えるとこうなる。『読んだ本を言ってみたまえ。どんな人間か当ててやろう』。本も食物も栄養になる点では同じ。よく噛んで食べよう。次の子どもの疑問が分かりやすい。『本を読んでもほとんど忘れてしまうのになぜ読むの?』。先生が答える。『毎日何を食べたか忘れても君は大きくなっているね』」。読書週間に思い出す話である。

 先日の当社の会議で、所長や専務から「今の若い社員は言葉を知らない」という嘆き節が聞かれました。聞いてみると「当たらずと雖も遠からず」とか「もっと深堀して考えろ」と言っても分からないというのです。この話を妻にしたところ、外国人に災害情報を伝える場合は、日本人に話すよりも分かりやすい言葉に言い換えて話すと良く伝わるとテレビで言っていたといいました。なるほどと思いました。言葉を多く知らない相手には、彼らが分かる言葉で説明すればよいのです。「当たらずと雖も遠からず」なら「近いけれども少し違うね」、「もっと深堀して考えろ」なら「もう少し深く考えてみよう」でどうでしょうか。「深く考える」が分からなかったら、何をか言わんやです。「何をか言わんや」の意味、分かりますよね。

 仕事におけるコミュニケーションの大切さが言われますが、言葉が通じなければコミュニケーションになりません。まずは新聞を読み、月に1冊、最低でも年に3冊は本を読みましょう。分からない言葉があったら直ぐに辞書で調べてください。脳に栄養が与えられ、しっかりコミュニケーションが取れるようになり、仕事もうまくいきます。さらに、詩や小説を読み、情緒ある日本語に接しましょう。日本人に生まれたことを感謝できるようになりますよ。

 萩生田文科相の「身の丈」発言がなかったら英語民間試験が実施され、ますます国語より英語に力が注がれ、日本人の国語力がさらに弱まることになると思うと、大臣は良いことを言ってくれたと思います。そして「身の丈」発言を高岡商業高校での課外授業の中で使い、さらにはこのコラムで社員に読書を勧められたと思うと、これまた「良い発言」だったと思うのでした。

東北大学で共に学んで50年を祝う会

2019.10.01

今年4月、住所があきる野市と記された鈴木さんという、名前に覚えのない人から手紙が届きました。開封すると、東北大学で同時期に共に学んでから50年が経ったということで、9月28日(土)の昼12時から仙台で、「東北大学で共に学んで50年を祝う会」を開こうと企画しているとのこと。末尾に「東北大学経済学部50周年同期会幹事グループ」として鈴木さんの他、佐藤、高久、星野、目黒の4人の名前が書かれていましたが、覚えているのは目黒さんだけです。彼とは宝生流と観世流と流派は違っていましたが同じ能楽部に所属していて、卒業後も年賀状のやり取りを続けていたからです。

 7月に正式の案内状が届きましたが、出欠の回答は8月9日までとなっていて、どうしたものかと迷いました。そこで7月19日に東京でセミナーに出席した後、東京近辺に住む大学柔道部の同期の仲間3人と飲んだ際に、同じ経済学部だった大野さんと和田さんに「50年を祝う会」に出るのかどうかと尋ねたところ、二人ともあっさり「出ない」とのこと。これで出席しようと腹が決まりました。理由は簡単、「せっかく幹事さんたちが準備してくれているのだから」です。

 出席の回答をしたところ、8月20付で幹事の鈴木さんから葉書が届きました。葉書には、「林さんのことは間違いでなければ、(教養部があった)川内(キャンパス)で腰に手ぬぐいを下げて自転車に乗っておられた姿と、おおらかなお人柄だったような記憶があります」と書かれていました。また、「今のところ22名が参加予定で、(私が3年生の時に所属していた)服部先生のゼミでは高橋信敏君が出席してくださるそうです」とも書かれていました。「腰に手ぬぐいを下げて自転車」は間違いなく私です。私は、鈴木さんが私のことを覚えてくれていたことを嬉しく思うと同時に、鈴木さんのことを全く思い出せないことを申し訳なくも思いました。また、服部ゼミの記憶もほとんどなく、高橋さんのこともこれまた思い出せませんでした。

 9月に入り、鈴木さんから4度目の便りがあり、現役で陣頭に立って活躍していて、今回はるばる日本アルプスを越えて参加してくれるということで、開宴に際し私に乾杯の音頭を取ってほしいとのこと。出欠の葉書に近況を書く欄があったので、私は「72歳になりましたが、建設業と介護事業の経営に携わっています」と書いたのですが、私以外の参加者は皆さん引退しているのだろうと想像され、また、日本海側からの参加は私だけなのだと分かりました。

 9月28日、大宮で北陸新幹線から東北新幹線に乗り換え、ジャスト3時間で11:07に仙台駅に到着。大宮から仙台への車中では、車窓から福島県の吾妻連峰や磐梯山、そして宮城県の蔵王などの山々を眺めながら、宮沢賢治の弟である宮沢清六さん著の「兄のトランク」を読んでいました。そもそも私が東北大学を受験したのは、受験勉強中に読んだ宮沢賢治の童話や詩に惹かれ、賢治が生まれた岩手県のある東北地方に行きたいと思ったからなのです。

 会場に着くと、受付で「やあ、林さん」と声をかけてくれたのが鈴木さんでした。でも、見覚えはありません。やはり声をかけてきた目黒さんは、少し太ってはいましたが、分かりました。受付でもらった参加者名簿を見ても、思い出す名前は目黒さんだけで、名乗ってくれた鈴木さん以外の19人は全く分かりません。

 祝う会が始まり、司会者の進行のもと、鈴木さんの開会あいさつに続いて私の乾杯です。「初めにお断りしておきます。背中は曲がっていますが心は真っ直ぐの林です。さて、あと3日で10月1日。消費税が10%に上がりますが、消費税が3%から5%に上がった時に作られた川柳が、“消費税 上がる前にと 無駄遣い”で、5%から8%に上がった時に作られたのが“値が上がる 物価に主婦が 音を上げる”でした。私は経済学部に入学しましたが卒業は柔道部なので、経済のことはあまり分かりませんが、消費税が10%になると不景気になるという予感がしています。さて、同窓会についてこういう川柳がありました。“同窓会 出ないと死んだと 噂され”というものです。5年前にも有志による会が行われたと聞きましたが、5年後にも行われると思います。その時には、今日お集りの皆さんには、死んだと噂されないよう必ずご出席ください。」と挨拶してから、「乾杯!」と発声しました。

 会食が始まり、参加者名簿の順に一人ずつ正面のステージ上で挨拶しました。顔も分からなければ名前も分からない人ばかりなので、一人ひとりの顔写真をスマホで撮りながら、名簿に書かれた近況や大学の思い出のメッセージの横に、スピーチでのポイントを書き込みました。最初に挨拶した恰幅の良い白髪の石井さんには、「64歳で仕事を終え、今は語学(ドイツ語)と釣りとゴルフ」と書いていました。2番目のスラっとした井上さんには、「学校に行かなかった」と書いていました。4番目の佐藤さんは、「軟式庭球部に所属していて、卒業時に学長賞をもらった」とのこと。杉本さんは日銀に30年間いて、香港大学に留学し中国語を学んで外交官も2年間やったとのことで、あとから、日銀時代に、富山第一銀行の現在の頭取の横田さんと一緒に働いていたと言われました。そして幹事で連絡係の鈴木さんの近況には、銀行に就職し55歳で退職し、2社で働いた後、年金生活が8年になったとあり、この間に暮らした地域は、東京が合計33年のほか大阪、広島、仙台、富山、国外各2~5年ずつと書かれていました。鈴木さんに、富山にはいつ頃いたのかと尋ねたら、平成11年から15年とのこと。高岡市民病院の近くのクラウンという喫茶店によく行ったと、懐かしそうに話してくれました。

 学生時代の思い出は勉強しなかったことと語る人が多く、ボート部に所属していた竹内さんの、松島にある合宿所で寝起きしていて、学校に行くと言うと周りの部員にびっくりされたという話を聞いて、私より上がいたと変に安心しました。今は、海外旅行や国内外の登山にいそしむ人、ボランティア活動をしている人、今年からパソコン教室に通い始め初級を目指している人など、それぞれの人生の一片を知ることができました。

 そして驚いたのが、山口八平治さんの「国分町の居酒屋“炉ばた”に夜の9時ころに行くと、店の祝ちゃん(祝子という名前)が鯨の刺身を出してくれた」という思い出話。私も柔道部の大野さんと時々出かけた店で、祝ちゃんが仙台弁で「おばんでござりす」と明るく迎えてくれました。彼女はやさしさに惹かれる女性でしたが、私がサラリーマンになってから聞いていたラジオ番組の永六輔の「誰かとどこかで」に、引退していた祝ちゃんに永六輔がインタビューしているのを聞いて驚いたことも思い出しました。その日の夜、仙台在住の柔道部の先輩、後輩と“炉ばた”に出かけ、当時と同じようにもんぺ姿で「おばんでござりす」と迎えてくれた年配の女性に祝ちゃんのことを話したら、何と彼女は昭和2年生まれとのこと。私より20歳も上ではないか!純情だった学生時代の私には、せいぜい2、3歳上にしか見えなかったのに、当時で40歳を過ぎていたことになります。

 この原稿を書きながら名簿の名前とスマホの写真を見比べても、学生時代の顔は全く思い出せませんが、皆さんそれぞれに社会に出てから頑張って生きてきて、仕事を退いた今も充実した日々を過ごされている様子に接し、思い切って同期会に出かけてよかったと思います。私自身も柔道と酒に明け暮れた青春時代、そして社会に出てからこれまでの49年間(私は1年留年したので、共に学んで49年なのです)を振り返ることが出来ました。そしてこれからも、健康に留意しながら、しっかり会社経営をしていこうという思いを強くしました。

FMとやまで放送中(賢者の名言)

2019.09.01

7月2日に、当社が保険契約しているAIG損害保険会社の富山支店長から、AIG損保が提供しているFMとやまの番組「賢者の名言」への出演と7月22日の収録を依頼されました。番組の内容は、先人たちが遺した古今東西の名言を、パーソナリティーの魚住りえさんが毎朝5時55分から一つずつ紹介し、その後に富山県内法人会の会員が会社と法人会のことを話すというもので、放送は9月に毎週1回、計4回の放送というものでした。

  承諾したところ、早速翌日にAIG損保の担当者からメールで2案の原稿が届きました。第1案は、「富山法人会会員、朝日建設株式会社の林です。当社は昭和15年創業。『建設事業を通じて、世の中の役に立つ』という経営理念の元、ふるさと富山の風土と向き合いながら歩んでまいりました。富山法人会では、税に関する各種セミナー等を開催しております。」で、第2案は「富山法人会会員、朝日建設株式会社の林です。1940年創業の建設業者です。2040年の100周年を見据えながら、社員一人ひとりの成長を通して日々ステップアップを目指してまいります。(以下、前掲の原稿と同じ)」で、以下の確認事項がありました。

①平仮名130文字程度となります。

②最大や、最上級の文字は使用出来ない可能性が高いです。(エビデンス必要)

③ご提出頂きました原稿はラジオ局にて【修正】を頂く事があります。ご了承ください。

④構成は、前半は会社PR、後半に法人会のPRとなります。

⑤原稿は出演の2週間前にはご提出をお願いします。

  私は、第1案は当社の経営理念の1番目を、第2案は2番目と100周年を目指すビジョンを表現しているので、両方をミックスして、中心部分の言葉を「1940年創業で今年79年目、100周年の2040年に向かって、社員一人ひとりの成長を通してステップアップし、富山の発展を目指しています。」と修正して返信したところ、7月17日に「富山法人会会員、朝日建設株式会社の林です。当社は、100周年の2040年に向かって、社員一人ひとりの成長を通してステップアップし、富山の発展を目指しています。富山法人会では、小学生を対象に租税教室を開催しております。」という、なかなか引き締まった文章に修正された最終原稿が送られてきました。

  7月22日の収録は、一度原稿を読んだ後に本番録音しましたが、録音前に読んだ時より声が固いと言われ、録音しなおしそれを聞いてOKとしました。収録を終えてから、目覚まし時刻を6時から5時54分に早め、55分からの「賢者の名言」を聞いてみましたが、知り合いの社長も何人か出演していました。会社紹介の内容は、創業年や創業の地、事業内容の紹介がほとんどで、経営に対する想いを語っている社長もいましたが抽象的に思われました。それに比べると、当社の内容は、2つの経営理念と将来への思いが短い言葉の中に込められていて、我ながら良くできていると自画自賛しています。

  私は、当社に入社した昭和50年に、当時人事考課制度では日本の第一人者であった楠田丘(くすだきゅう)先生のセミナーを受講し、「人事考課制度は、給料や賞与の査定に使うだけでなく、人材育成に使ってこそ意義がある」という言葉が強く心に残り、翌年にはコンサルタントを導入して人事考課制度を作り、平成18年からは田中久夫方式の賃金体系を導入し、平成27年には、濱岸コンサルタントによる人事考課セミナーを全社員参加で2日間にわたり開催しました。また、各種セミナーに社員を参加させてきて、平成27年から4年間にわたっては、タナベ経営による当社向けの各種セミナーをシリーズで実施してきました。しかし、給料や賞与の査定においては、AさんよりBさんが上というのは妥当であっても、AさんとBさんの格付けの差が妥当なのかどうか、目標管理に基づく査定を行っているが、目標そのものに個人差があって査定には活かせていない、半年ごとの評価は長すぎるのではないか、格付け検討会ごとにエクセルで作った大量の資料が準備されるが、その時限りの資料となっている、などの問題を感じており、社員教育においても、成果が上がっているとは思われないという現場の声を聞いていましたし、私自身も一過性に終わっている感が否めませんでした。

  そこで、これらの課題を解決するための切り札として現在取り組んでいるのが、「あしたのチーム」式評価制度です。この人事評価制度を知ったのは、昨年11月にタイトルにひかれて参加したセミナー「人事評価制度7つの新常識」でした。「あしたのチーム」という変わった名前の会社の担当者から説明を聞くうちに、私が当社の人事考課制度や社員教育で抱えている課題が解決できそうだと思い始めました。

 「あしたのチーム」式評価制度とは、ざっくりと記すなら、全社、各部門、各役職で決められた行動目標に対して、各自(被評価者)が上司(評価者)とクラウド上でやり取りしながら自分なりに具体的に落とし込み、納得の上で目標を設定し、その設定した目標に対して四半期ごとに本人と上司が達成度合いを4段階(よく出来た、出来た、出来なかった、全く出来なかった)で評価する(5段階評価の中間の「普通」は無し)というものです。この評価方式を、「あしたのチーム」は『ゼッタイ!』評価制度と呼んでいます。

  私が当社の人事考課制度に抱いていた不満が、『ゼッタイ!』評価制度ですべて解消されると直感しました。なおかつ、常々関心を抱いていたクラウドを活用でき、さらには、この「あしたのチーム」式評価制度を導入した場合には、導入後の3か月間は「あしたのチーム」がクラウドを通して、各自が目標を設定する際に「おせっかい」をやいてアドバイスをしてくれます。

  このセミナーの後、本部長会議に「あしたのチーム」の担当者を呼んで説明させました。3人の本部長からは、また新しいことを始めることに対する慎重論も出ましたが、私は、『ゼッタイ!』評価制度は社員が着実に成長できる仕組みであり、創業100周年の2040年に向かって今すぐこの仕組みを作らなければいけないとの信念から、導入を決定しました。

  課長以上を対象に、6月~8月をトライアル期間としてスタートしましたが、システムの操作方法に慣れるのに苦労したり、何度も上司である専務や私から差し戻しされたりで、8月末にようやく目標が承認された課長もいました。7月に東京で参加したセミナー「AIで経営はどう変わるのか?社長のための“AIビジネス”」で講師から聞いた言葉「現場の人は、AIに対して“導入の壁”と“定着の壁”がある」の、先ずは「導入の壁」を実感しています。今後は「定着の壁」にもぶつかると思いますが、この『ゼッタイ!』評価制度で、全社員の成長を実現します。72歳ですが、ボーっとしている暇はありません。

  なお、私の放送は毎週金曜日ですので、9月27日の最終回を聞けたら聞いてください。