2015年の介護保険改定その後

2016.01.13

2014年12月のこのコラム「来年の介護保険改定に異議あり」は、「2000年から始まった介護保険制度では、介護サービスを提供する事業者が対価として受け取る公定価格の介護報酬が3年ごとに見直しがされ、来年は5回目の改定である。」と始まり、後半で「週刊ダイヤモンド11/18の記事を読み、驚きが怒りに変わった。10月8日に、財務相の諮問機関が介護報酬を6%程度引き下げるよう厚生労働省に求めたとあり、また、財務省が、介護の全サービスの利益率の加重平均が8%程度で、中小企業の売上高純利益率の平均2.2%より高いという理由で、利益率の高い事業の単価を下げるように主張しているという。さらに、財務省は「6%引き下げは、あくまで介護サービス平均」と言い、引き上げるサービスがある一方で、6%以上引き下げられるものもあるとしているとのことだ。」と書き、「利益率は各企業で違っていて当たり前であり、その平均値をサービス単価切り下げの根拠にするのは、顧客であるお年寄りやそのご家族に満足して頂きながら、同時に企業を継続するためにちゃんと利益を上げようという、まともな介護事業経営者なら普通の考え方に冷や水を浴びせるようなものだ。処遇改善への加算などを拡充して人手不足を解消しようとしても、介護事業者の事業自体が悪化して介護職員の処遇が引き下げられたり、経営意欲を失って廃業や経営破たんしたりするようになれば、本末転倒である。こんな自明のことが、財務省や厚生労働省の役人には分からないのだろうか。腹立たしい限りだ。」と締めくくっています。
 その後、財務省と厚生労働省の駆け引きを経て昨年4月の介護保険改定で、9年ぶりに実質4.47%、処遇改善加算などを加えても2.27%という介護報酬の大幅マイナスがなされました。

 朝日建設の子会社として平成14年に設立した(有)朝日ケアは、平成15年から「あさひホーム」、平成18年から「あさひホーム吉作」を運営する中で、平成22年から平成26年までの5年間、それまでの赤字を脱して、利益額は毎年減少し利益率は1%そこそこでしたが黒字でした。厚労省による経営実態調査、特養の利益率8.7%でディサービスのそれが10.6%(平成26年3月時点)は、どんな調査に基づいているのか実に怪しい数字だと思っています。
 しかし残念ながら昨年の5月末決算で、再び営業赤字に転落してしまいました。介護報酬の改定が4月で朝日ケアの決算が5月末ですから、介護報酬引き下げの影響は2ヶ月間だけでしたのに赤字になったのです。平成27年度の月次決算では、昨年はスタートの6月からずっと赤字が続き、今年5月末の本決算では昨年を大幅に上回る赤字が避けられそうにありません。
 さて、昨年9月に「介護事業者の倒産最多 今年1〜8月、55件 報酬減や人手不足響く」という見出しの新聞記事を読み、私のコラムで指摘した「廃業や経営破たんしたりするようになれば、本末転倒」の通りに進んでいると思いました。さらに12月には、「介護報酬が今年4月から9年ぶりに引き下げられたなか、2015年1-11月の「老人福祉・介護事業」の倒産は66件に達した。すでに前年の年間件数(54件)を上回り、介護保険法が施行された2000年以降では、過去最悪ペースをたどっている。介護職員の深刻な人手不足という難題を抱えながら、業界には厳しい淘汰の波が押し寄せている。」と報道されました。それに対して厚生労働省は、「今回の報酬改定が事業者の倒産につながったかどうか判断できないが、経営への影響を調査し、3年後の報酬改定に反映させていきたい」(NHK)とのこと。次の介護報酬改定の2018年までに多くの介護事業者が倒産し、介護保険制度そのものが成り立たなくなるとは考えないのでしょうか。自分で介護をしたこともなく、介護現場の現実も知らない厚生労働省の役人の能天気振りにあきれてしまいました。お年寄りや家族のために介護保険制度を考えているとはとても思えません。
 また、安倍首相が新たに掲げた「介護離職ゼロ」を達成するために、20年代初頭までに合計50万人分以上のサービス基盤を整備するという報道にもあきれました。新たに介護施設を作っても、人員基準数の介護職員が採用できず開業できない施設の多発が問題になっているのに、施設を増やしてもそこで働く介護職をどうやって確保するというのでしょうか。
 朝日ケアのホームページに「チョットいい話♪」というコーナーがあり、「あさひホーム」と「あさひホーム吉作」が、利用者さんやそのご家族からいかに喜ばれ感謝されているかがわかる話も掲載されています。あさひホームのサービスを全般的にご利用頂いているN様の娘様からのコメント「あさひホームはディサービス、ショートスティ、訪問介護、グループホームと連携がとれていて安心して任せられます。またスタッフのレベルも高く、些細な事も教えて下さり気付かされる事も多いです。ついつい頼ってしまいますがこれからもよろしくお願いします。」に感激しました。感動的な話が他にもたくさん載っていますので、ぜひホームページをご覧ください。
 最後に、私がこれまで12年間介護事業の経営に携わってきて思うことを書きます。第二次世界大戦で、現在90代の大正生まれ、現在80代の昭和1桁生まれのお年寄りは、男性は兵士として戦い、女性は銃後を守り、中等学校以上の生徒や学生は軍需産業や食糧増産に動員されました。また大都市の学童は、地方に集団疎開しました。そして戦後の焼け跡からの復興は、今の80代、90代のお年寄りの力によるものです。私の母も、富山の大空襲で焼夷弾の降る中シンガーミシンをかついで逃げ回り、戦後そのミシンを使って、注文を受けて洋服を作り洋裁を教えることで、家計を助け父の仕事を助けていました。戦中戦後にご苦労されたお年寄りにとって、あさひホームをご利用される時間がハッピーであって欲しいと心から願っています。この私の願いにあさひホームの介護職員の皆さんは、時にはここまでするのかと思うような介護で応えてくれています。感謝の念に耐えません。
 社会保障支出を抑制することしか考えない財務省と、介護事業所の実情を知らずに介護報酬をいじくり回す厚生労働省とに翻弄されている介護事業経営ですが、私は前述の思いを忘れずに、これからも知恵を絞って朝日ケアの経営に当たります。そのために経営者が必要なのですから。 

角川温泉運動会員その後

2015.12.21

7月のコラム「角川温泉運動会員」の最後の文章は、「これまで健康のため、そして、みっともない姿勢を治そうと色んなことをやってみましたが、長続きしたためしがありませんでした。しかし今度は、「93歳で、背筋を伸ばして元気一杯」というビジュアルな目標があります。今度こそ続けたいと思っていますが、12日(日)と14日(火)に出かけたものの、仕事がつまっていてその後6日間行っておらず、今日21日(火)も懇親会があるので行けません。しかし、懇親会の無い日は、午後5時を過ぎても9時、10時までだらだらと仕事をしていることが普通の私ですが、このセンターの営業時間が午後9時までなので、午後7時までに仕事を切り上げて出かければちょうどよい温泉運動が出来ると思います。会社と自宅の間の良い気分転換の時間にもなることでしょう。1年後に、「こんなに姿勢が良くなりました」というコラムが書けたらよいと思いながら、これにて今月のコラムを終了します。」でした。

 今月は、その後はどうなっているかについて書きます。結論から先に書けば、またまた挫折しそうになったのです。

 7月14日の3回目の後、7月は22、24、26日と3回行きました。8月は中1日から中4日の間隔で10回、9月も同じような間隔で10回、しかし10月は、19日(月)のプロジェクト会議、翌日から1泊の名古屋出張、そして22日(木)から25日(日)まで4日連続の飲み会で7日間行けなかったことがたたって8回、そして先月11月は22日の日曜日と23日の祝日には行こうと思えば行けたのに行かず、24日(火)までに行ったのは6回、25日(水)から28日(土)までは時間が取れませんでしたが、29日(日)も億劫になって行きませんでした。そして今月12月は、午後7時を過ぎても仕事が終わらない日が多く、5日連続の忘年会もあったりして、11月25日以降1回も行けずに3週間が経過し、思うように時間が取れないということで、止めようと思うようになってきました。

 しかし、この理由を強力に後押ししているのは「つまらない」なのです。たいていの会員は1時間くらい利用していますが、私はまずプールの中を7分間ほど歩いてからジェット水流を腰や肩に当て、気泡風呂の後に5分間サウナに入って30分間で切り上げます。しかしその30分間でも、一人黙々と運動するのが何ともつまらないのです。

 「角川温泉運動会員」を止めようという気持ちがどんどん強くなってきたものの、12月の最後のほうだけ利用するとしたら会費はどうなるのか気になり、18日にセンターに電話して尋ねました。(【補足】参照)回答は、25日以前の利用なら1日240円の日割りで月末までの日数分の会費、26日(土)からだと無料とのことでした。12月30日からは休館なので、電話した翌日以降29日までの11日間の内、私の利用可能な日をチェックしたら7日間ありました。そうすると、直近の利用可能な20日から29日までは、7日間の利用ですが10日分の会費で240円×10日=2,400円支払うことになり、26日から29日だと、3日間利用できて無料ということになります。そうなると現金なもので、健康のことを考えるなら20日に2,400円払って年内7回利用すべきなのでしょうが、20日からではなく26日から再開しようという気になりました。

 しかし、「つまらない」は解消されていません。今後のコラムで、どのようにして「つまらない」を克服し「角川温泉運動会員」を続けているか書けたら良いと思っています。

【補足】
角川介護予防センターの会費は、入会月のみ開始日から月末までの日割り計算(1日240円×月末までの日数)となります。

読書会

2015.11.28

私が世話人代表(支部長のような役目)を務める「新老人の会」富山支部では、今年度の活動として、「新老人の会」の会長である日野原重明先生(現在104歳)の著書「日野原重明 101歳の金言」をテキストに、7月から隔月で読書会を行っています。

 「新老人の会」は、財団法人ライフ・プランニング・センターの理事長として「よく生きる」ことを追求してきた日野原重明先生(現在、一般財団法人聖路加国際メディカルセンター理事長、聖路加国際病院名誉院長)が、シニア世代の新しい生き方を提唱し、この「新老人運動」に賛同する方々の集まりとして、2000年9月に発足しました。

 当支部は2007年(平成19年)3月に設立され、2009年(平成21年)4月から私が世話人代表を務めています。2011年(平成23年)9月のこのコラムで、9月9日に高岡文化ホールにおいて行った“「新老人の会」会長 日野原重明先生 百歳記念講演会「生きがいをもとめて」”の開催の経過を振り返っていますが、この講演会の後に入会者が大きく増えて会員数が88名にまでなりました。しかしその後は退会者が続き、本年10月末現在、全国に10,265名の会員を擁する46支部の中で、当支部の会員数は48名で下から2番目に甘んじています。

 この6年間、私なりに当支部の活動を模索し、会員向けのピアノコンサート、元ファッションモデルで東京本部の会員さんによる講演会「さっそうと歩きましょう」、音楽療法講演会「健康と音楽の力」や、一般公開講座「赤ちゃんに音楽を」(講師:「新老人の会」長野支部世話人代表 中澤弘行さん)を開催しました。また、新潟支部や石川支部が主催した日野原先生の講演会に誘い合わせて参加もしましたが、いずれも単発の活動であり、支部会員相互の結びつきを強めるまでには至りませんでした。

 そんな問題意識から、今年3月に開催した富山支部世話人会で私は、今年度の活動として会員が定期的に参加する茶話会のような催しを行ったらどうかと提案したところ、4月の世話人会で、元中学校の先生の松井さんが、私の提案を発展させた読書会の企画を説明され、その場で7月4日(土)に富山駅の北にあるアーバンプレイス14Fの日本橋「俵屋」で行うことに決めました。テキストは、私が日野原先生に「読書会のテキストは何がよろしいでしょうか」と尋ねた時に答えられた「日野原重明 101歳の金言」とし、「新老人の会」本部に依頼して著者割引で購入しました。

 そして第1回読書会が7月4日(土)に16名の会員の参加で行われ、第1章「自分を輝かせるために」に書かれている5つの文章、「遺伝子を目覚めさせる」、「人生は「吸う」より「吐く」、「人生を10年で区切る」、「リトリートのすすめ」、「いのちの光を与え合う」を、5人の会員で読んだ後、それぞれに感想を述べました。ほとんどの参加者は70歳後半から90歳近くであり、「父親は自分が生れる前に戦死し、世話になった母親は95歳で今も元気。他人との出会いと孫の成長が楽しみ」、「長生きするためにプールに通っている」、「日野原先生のような洗練された文章は書けない」、「本を選択する時の基準は、?表紙、?はじめに、?おわりに(あとがき)です」など、それぞれに味のある感想でした。私は、「今年が会社の創業75周年なので、100周年に向けて、私の現在の年齢68歳を10年区切りで歩みたい」と話しました。

 第2回の読書会は、9月26日(土)に会場を高岡の大野屋に変えて16名の参加で、第2章「健康を維持するために」の「5つの習慣をもつ」、「呼吸は息を吐く」、「うつぶせ寝で疲れ知らず」、「ブロッコリーは長寿野菜」、「歯は健康のもと」を読みました。「小さい頃は痩せっぽちだった。11歳違いの弟をおんぶして通学し、食糧不足で友達におにぎりを分けてもらうなど、辛い思いをした。今は栄養に気をつけ、お宮と地蔵堂の上がり降りをして健康に努めている」や、「毎朝お経をあげているが、途中で切らないように心がけている。お坊さんに長生きする人が多いのは、息を吐くことが多いから」、「うつぶせ寝で腰痛がない」などの感想があり、私は「朝の犬の散歩の時、日野原先生がされているように、吐いて、吐いて、吐いて、吸うことと、うつぶせ寝にトライしてみます」と述べました。その後の散歩では、4回で息を吐き切ってから次に肺一杯に吸っていますが、うつぶせ寝にはなかなか慣れることができません。

 第3回目は、11月14日(土)に再び俵屋で10名の参加で、第3章「悔いのない一生にするために」の、「いのちは巡る」、「いのちを存分に使う」、「朽ちて実を結ぶ」、「死をクリエイトする」、「運命はデザインできる」を読みました。「運命はデザインできる」に共感する人が多かったのですが、この文章で日野原先生は「東日本大震災と福島の原発事故に遭遇した日本が、この災害を受身の運命とせず、復興に向け前向きに、共に歩もう!という想いで、私は「運命をデザインする」という言葉をつくったのです」、そして「新たな運命の芽は、身近な場面にあるものです。あとは、あなたがそれに気づき、どうデザインしていくかなのです」と書いておられます。とても力強く前向きな気持ちに皆さん感服しました。

 毎月のように本部から退会者を知らせるメールが届きガックリしているのですが、新たに始めたこの読書会のお陰で、1ページも読んでいなかった「日野原重明 101歳の金言」を読み始められ、私より年長の先輩方々の話を聞けることは、ずいぶん幸せなことだと思っています。何事もやってみることですね。