次世代プロ幹部育成研修会

2015.04.27

昨年11月のこのコラム「2040年に向けてなすべきこと」の最後は、『2040年に向かってなすべきことの基礎は常に「人材育成」であり、そのための優れた人事考課制度の構築と実践だと確信している。』で締めくくっている。

 そして、コラムの中程に、『しかし、今なぜ26年も先の創業100周年なのか。その出発点は、今年6月に金沢で開催されたタナベ経営の「ファーストコールカンパニーフォーラム2014」へのD土木本部副本部長とH総務部長を誘っての参加である。このフォーラムのタイトルが「ファーストコールカンパニーへ挑む〜100年先も一番に選ばれる会社を創る〜」だったのだ。この「100年先」という一言が、日本には100年以上続いている長寿企業が2万6千社あるという帝国データバンクの調査数字を思い出させ、当社の100周年が2040年であり、その時にも確実に存続している会社であるためには、何が大事なのかと考えさせ始めたのだった。』と記している。

 これを受けて、コラムの終わりのほうに『私の経営理念のふたつ目は「人は経費ではなく資源」であり、資源であり財産となる社員を育てるために、新年式で発表する「年度の経営指針」の第一番に昨年、今年と「社員教育の徹底」を挙げた。昨年はお題目に終わってしまったが、今年は「社員教育プロジェクト」を実施している。来年の経営指針も、第一番は「社員教育の徹底」とし、具体的な戦略として、人事考課セミナー、考課者訓練、被考課者訓練の実施と「職業能力評価基準」の作成を挙げようと考えている。』と書いている。

 実際に今年の新年式で発表した今年度の経営指針の第一番目は「社員教育の徹底」であり、この実践として、(1)建設マネジメントコンサルティング研究所所長 小澤康宏氏による社員教育プロジェクトの継続と、(2)(一社)日本経営協会専任講師 濱岸末雄氏による社員全員対象の能力開発・向上セミナー「職業能力評価基準の活用」の開催  開催日:2015年5月15日(金)16日(土)  を掲げた。

 (2)の社内セミナーの企画は、昨年11月に濱岸講師による職業能力開発推進者講習(「職業能力評価基準」の活用)に参加したことが引き金になったのだが、私に創業100周年を意識させた昨年6月の「ファーストコールカンパニーフォーラム2014」で知り合ったタナベ経営の大川常務が金沢支社の千馬(ちば)さんとその後何度か来社されていた。大川常務は私との会話から私の社員教育に対する考え方を汲み取り、昨年末に「貴社が事業承継を成功させ、創業100周年に向け永続発展していけるかどうかは、現在の中堅幹部人材が真のプロ幹部(部門経営が出来る人材)にステップアップが出来るかどうかが大きなポイントである」として「次世代プロ幹部社員育成研修会」の企画書を説明された。その時は、小澤コンサルタントによる社員教育プロジェクトが進行中であったし、有名なタナベ経営による一年間12回、毎回1日半の研修会なので料金も相当の金額だったこともあって、それほど真剣には話を聞いていなかった。説明の後私が「小澤コンサルタントによる社員教育プロジェクトは1年間なので、途中から参加できなくなる工事部門の技術職社員が現れがっかりしている。建設会社での研修は4〜6月の仕事が少ない時期でないと難しい」と話したら、今年1月下旬に、4〜6月に毎月1回1日半3回コースで行う今回の研修企画書を持って来られた。昨年、大川常務との打合せに同席していた総務部長は1月2月は決算で忙しく、さらに結婚直後で何かと大変な時期でもあったので結論は出さずにいたところ、3月9日(月)に来社された大川常務からこの企画の実施について問われた。私自身は企画書を読み返す中で内心やってみても良いかと思いつつあったし、成果が上がるのなら料金は大きな障害ではないと考えていた。しかし、受講する社員の気持ちはどうだろうかと思ったのでこの日は結論を保留し、私とH専務、H取締役との3人で毎週火曜日に行っている経営者ミーティングを拡大して、翌週の火曜日17日に、D所長、O所長と小澤コンサルタントの社員教育プロジェクトに参加しているM副所長を交えてタナベ経営の提案について協議した。社員教育プロジェクトでは議論し考える場を持てたことは良かったとか、このプロジェクトに参加して意識が変わった社員もいればそうでない社員もいるという感想を聞き、社員教育プロジェクトの反省を踏まえた上で、創業100周年に向けタナベ経営の提案を受けようと決めた。

 早速翌日大川さん、千馬さんと打合せし、4〜6月の土、日の日程と、参加メンバーは50歳以下で主任以上の社員としてアンケートの実施により選定することを決めた。19日に4月の宿泊会場を手配した上で、23日には「会社に対するアンケート」の実施を36人の選定対象者に文書で通知した。そして4月6日に、タナベ経営が選定した社員の案を、4月1日付で新設した経営企画室の教育担当メンバーのD業務本部長、O営業部長、A総務部長と私の4人で検討して、今回の研修会参加メンバー16人を決定した。

 4月17、18日に富山観光ホテルで開催された研修会に、私は2グループに分かれての討議時間以外は全てのカリキュラムに参加したが、2回のグループ討議の後の活発な発言がなされた全体討議と、2日目の最後に受講者が書いた前向きな言葉が綴られた受講レポートから、今回の研修は成果が大いに期待できると思った。これから、参加メンバーが日に日に成長していくことを周りの皆さんはきっと感じることであろう。

 研修会の途中、私は大川常務に「当社に入って40年だが、もっと早くから社員教育に力を入れたらよかった」と話したら、「やらなくてもこれだけなのだから、やればもっと会社が良くなりますよ」との返事。その通り、「思い立ったが吉日」。100年企業に向かって前進あるのみだ。

 

大川講師による講義
1日目の全体討議
朝礼での基本動作訓練
基本動作訓練の様子
1分間のコメント訓練
研修会場入口の看板
2回目の全体討議

パーソナル・ソング

2015.03.25

総曲輪で民芸店をやっている長男が3月初め、彼の店の近くにある映画館「フォルツァ総曲輪」で3月7日の土曜日から上映する映画「パーソナル・ソング」のチラシを持って来てくれた。本年度サンダンス国際映画祭で観客賞を受賞したドキュメンタリー映画で、アルツハイマー病が音楽の力で劇的に改善した事例が紹介されている作品とのこと。

 (有)朝日ケアで老人介護事業を営む者として、これは観なければいけないと思った。そこで、上映時間を調べるためにインターネットで「フォルツァ総曲輪」を検索したところ予告編が載っていた。「アメリカで500万人、日本には400万人がいるといわれる認知症の人々。認知症やアルツハイ マー病には完全な治療法がまだ無い」のナレーションで始まり、終わりのほうで「1000ドルの薬より、一曲の音楽を!」の言葉が流れる。認知症の老人にiPodからヘッドフォンで音楽を聴かせると、全く無表情だった老人が「オー」と声を上げ、過去のことを思い出して話し出したり踊りだしたりするその変わり様にビックリした。早く観たいと心がはやった。

 毎日15:45から17:10までの1回だけの上映なので、3月8日の日曜日にこの映画を観た。どの場面も感動的だった。そして、アメリカでの認知症対応の歴史も知った。施設を作り、身体を拘束し、薬に頼った介護であり、日本も後追いをしているのだと分かった。そして、「1000ドルの薬より40ドルのiPod」という、iPodを使ってのこの音楽療法実験を生み出したダン・コーエン氏の言葉が強く印象に残った。4月から介護報酬が2.27%切り下げられると、多くの介護事業所が経営破たんし、介護を必要とする多くの日本のお年寄りと家族が大変なことになるのではないかと思っている私にとって、薬ではなくiPodで認知症を回復し医療費を抑えることができるという事実を知り、日本の介護の将来にほんのチョットだけ光明が見えた思いがした。

 映画を観終わり帰りに買ったパンフレットに、以下の文章が載っていた。

 「老人介護における大きな問題点は抗精神病薬に頼りすぎていることだ」と監督は語る。老人ホームの患者の20%が抗精神病薬を使用している。しかしヘンリーのような患者にとっては、音楽こそが、精神的にも経済的にも最も効果のある手法だということが証明されつつある。
 老いを研究する学者であり、長期介護の改革を唱えるビル・トーマス医師は言う。「現状の健康保険のシステムは、人間をまるで複雑な機械のように扱っている。ダイヤルを調節するように患者をコントロールできる薬は持っているのに、患者の心と魂に働きかけるようなことは一切しない。」

 「ほとんど効かない薬を開発する費用に比べれば、アメリカ中の老人ホームにいる患者に、それぞれのお気に入りである“パーソナル・ソング”を届けるほうが、よほど効果的だろう。」と語るトーマス医師。「一ヶ月1000ドル(約10万円)以上の抗うつ剤を処方箋として出すことは簡単。しかし残念ながら音楽療法は医学的行為として見なされていない。投薬がビジネスになっているのです。」

 あさひホームの介護スタッフにも観てほしいと思い、このチラシを拡大コピーして、上映が始まる前にホームに持って行った。後日、訪問介護のスタッフが「観に行きました。とても良かったです。訪問先でやってみたいけれど、どうやって好きな音楽を聞き出すかが課題になりますね」と語ってくれた。他にも何人かのスタッフが観に行ったようなので、感想を聞いてみたい。そして、あさひホームにおいても、利用者お一人お一人の「パーソナル・ソング」を見つけ、認知症の改善を促す取り組みをしてみたい。そのことで要介護度が下がり、連動して介護報酬が下がっても良いではないか。経営的には苦しくなるが経営理念に合致するのだから、収入のアップは他で知恵を絞ろう。

 この映画の原題:Alive insideは「中は生きている」という意味であり、無反応でそこにいるだけのような認知症の人でも、音楽が脳の生きている様々な領域に届き、心を呼び覚まして当時の記憶を蘇らせると、パンフレットに書いてあった。カラオケが嫌いで、歌を歌うことなどほとんどない私に、「パーソナル・ソング」があるのだろうかと思ってしまう。認知症になったときのために、今のうちにこんな曲が好きだったとメモしておこうと思った。

北陸新幹線開業

2015.02.25

来月3月14日に北陸新幹線の長野―金沢間がいよいよ開業するが、このコラムが配布される2月25日は、「北陸新幹線開業あと17日」である。

 私自身は北陸新幹線の工事が着工されても開業にはそれほど大きな関心は無かったのだが、富山駅の新駅舎にライトレールが乗り入れるための富山駅南北接続軌道施設工事に、当社が昨年4月下旬から乗り込んだことで、隣接する駅前広場の工事も含め関連工事が開業に間に合うだろうかと、この頃から俄然気になり始めた。そして、開業前日の3月13日にリニューアル記念式典が行われることが決まっている富山県民会館の改修工事に伴う外構工事を受注し、施工検討会に参加して土日も祝日も返上の厳しい工程を知り、新幹線開業日の3月14日が脳裏に刻み込まれた。

 この北陸新幹線の開業効果を観光振興、地元産業の活性化、新たな企業誘致、定住・半定住等につなげたいと、行政も経済界も期待している。地元紙の北日本新聞や富山新聞でも、新幹線開業がらみの記事を見ない日の無いここ数ヶ月であり、県民が開業に向けて各方面で様々な準備をしている様子が良く分かる。しかし、開業効果を最も享受するのは終着駅の金沢であり、富山が開業効果を実感できるためには、果たして今のような準備で良いのかと思わせられたのが、日経新聞の2月14日と16日の記事であった。

 2月14日(土)の「日経プラス1」の1面「何でもランキング」での「何でも」は「新幹線でもっと身近に 金沢のお土産」だった。惣菜系の1位は加賀麩不室屋の「ふやき御汁 宝の麩」で、お菓子系の1位はまめや金澤萬久の「みたらし豆」だったが、私が食べたことのあるのは、惣菜系では1位の「宝の麩」だけで、お菓子系では、2位の「じろあめ壷入り」、6位の「麩万頭」と10位の「柴舟」だけであった。

 もうすぐ富山と高岡で、「エンジン01」文化戦略会議が「オープンカ レッジ」を開催するが、会議構成メンバーの一人である富山市出身で博報堂のクリエイティブディレクター太田麻衣子さんが昨年末の富山での講演会で、博報堂の女性社員十数人に北陸新幹線が開業したら行ってみたいところや食べたい物を尋ねたら、石川県のほうが富山県より圧倒的に上位だったという話を思い出した。全国紙でも、北陸新幹線開業でまず取り上げるのは金沢だという現実を、「日経プラス1」で思い知らされた。

 さらに追い討ちをかけたのが、翌々日2月16日の1面に掲載されているコラム「春秋」だった。「ある老舗で寄せ鍋をつつき、丸谷才一さんは驚嘆した。」で始まるこのコラムは、「丸谷さんだけでなく、泉鏡花や室生犀星、吉田健一と名だたる文人が金沢の味や城下のたたずまい、伝統工芸を賞賛してきた。住んだ経験のある五木寛之さんはエッセーに、ここは「目に見えない魔力のようなもの」が宿っていると書いた。」とあり、こう書かれては富山は金沢にチョット太刀打ちできないと思った。妻にこのコラムの話をしたら、「金沢はやっぱり歴史があり、土塀が続く長町の武家屋敷なんかもいいわ」と言う。確かに歴史を感じさせる街並みや、細やかな気遣いがされた料理は富山には無い。

 富山県には、近年台湾からの観光客がたくさん訪れるようになった立山の雪の大谷や黒四ダムなど魅力的な観光地はあるが、金沢のように通年で訪れる所ではない。私は常々富山は、魚も酒も水も空気も日本一美味しいと思っているが、先日ある人から「富山の寿司は寿司ではない。刺身とご飯だ。」と言われ、以前、金沢の有名な寿司屋で食べた寿司の味を思い出した。富山で食べる寿司とはどこか違っていたが、確かに、魚とご飯とが一体になった味わいがあった。

 観光なら、全国それぞれに訪れてみたいところがある。味にしても、その土地ならではの味がある。場所も味も今更変えられるものではない。しかし、富山県人に足りないといわれる「もてなしの心」は、意識すれば高められるのではないだろうか。

 先週、新潟に出張するために11時頃JR富山駅で海産物を扱っている店に入った。以前何度かこの店で結構美味しい握り寿司を買っていたので、この時も昼食用に握り寿司を買おうとしたのである。店のおばさんに寿司は無いのかと聞くと、未だ配達されていないとの返事。何時ごろ届くのかと聞けば、12時過ぎとのこと。「それではお昼時に食べたい人が食べられない。配達をもっと早めてもらえば良いのに、新幹線も来ることだし」と言ったら、その返事は「配達時間は決まっとっから仕方が無い。それに新幹線が来るとき、この店はもうやっとらんからいいが」。腹が立った。こんな対応をする富山県人ばかりではなかろうが、「もてなしの心」が微塵も無い応対であった。

 観光振興、地元産業の活性化、新たな企業誘致、定住・半定住等の促進は、新幹線開業によるなど時間的早さ、高速道路とのアクセスの良さ、居住環境や子育て・学習環境の良さなどハード面の整備だけではだめだと思う。また訪れたい、しばらく滞在してみたい、住んでみたいと思わせるものが無ければいけない。それは富山に来た人一人ひとりにとっての個別の想い出であり、その人にとっての物語だと思う。店員さんだけではなく、道を尋ねた人、タクシーの運転手さんの、そして大人にも子供にも誰にでも感じられる「もてなしの心」、「思いやりや気遣いの心」が想い出となり、富山ならではの体験が物語になるのだろう。

 北陸3県の県民性を表す言葉として、「越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師」というのがある。生活にぎりぎりまで困窮したら、富山県人は強盗を働き、福井県人は詐欺をしてでもしぶとく生きていくのに対して、加賀百万石の金沢の人は、なすすべもなく乞食になってしまうというのだ。強盗と言われて良い気分はしないが、富山県人の県民性である勤勉性を例えたものだと思えば、腹も立たない。北陸新幹線開業を契機に、勤勉性の土台の上に、他人に対する「もてなしの心」、「思いやりや気遣いの心」を積み重ね、旅する人に物語を作ってもらえるような工夫をしたいものだ。