そばかす

2023.03.24

 今月のタイトル「そばかす」は、今年ほとり座で観た16本目の映画です。

     

 先月のタイトル「チョコレートな人々」の後にほとり座で、「冬の旅」、「㊙色情めす市場」(日活ロマンポルノ作品の中でも最高傑作と呼び声の高い作品)、「天上の花」、韓国の監督の作品「郡山」、「福岡」、「柳川」、そして富山民芸協会が開催した「寝屋子-海から生まれた家族」、さらに「ただいま、つなかん」、「ドリーム・ホース」の9本観ました。

     

 「ただいま、つなかん」は、東日本大震災が発生した3月11日に観ました。3.11後に気仙沼市の自宅を片づけに来てくれたボランティアの大学生と、後にワカメ漁に出ていた夫と30歳の娘さん、そして末娘の夫で24歳のお婿さんの3人を船の転覆で亡くしましたが民宿として再出発する、この家のとても明るい菅野一代さんとの10年間にわたる交流の実話です。

     

 「ドリーム・ホース」は、イギリス・ウエールズの谷あいの小さな村で、村人が週10ポンドずつ出し合って共同馬主になって競走馬を育て、「ドリーム・アライアンス(夢の同盟)」と名付けられた馬が奇跡的にレースに勝ち進んでいくという物語です。これも実話を元にしていて、大怪我から回復した直後の大レースで逆転優勝するという感動的な映画でした。

     

 さて、「ただいま、つなかん」を観た翌日に「そばかす」を観ました。この映画は、第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」に出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した三浦透子の単独初主演作品です。

     

ストーリーをネットから紹介すると、

   

    私・蘇畑佳純(そばたかすみ)、30歳。

 

    チェリストになる夢を諦めて実家にもどってはや数年。コールセンターで働きながら単調な毎日を過ごしている。

 

    母は、私に恋人がいないことを嘆き、勝手にお見合いをセッティングする。

 

    私は恋愛したいという気持ちがわかない。だからって寂しくないし、ひとりでも十分幸せだ。でも周りはそれを信じてくれない。

 

    恋する気持ちは知らないけれど、ひとりぼっちじゃない。大変なこともあるけれど、きっと、ずっと、大丈夫。

 

    進め、自分。

     

 先月の「チョコレートな人々」の最後に「しかし『チョコレートの人々』を観て、当社ではこれまで、社員の性格や人間性、生い立ちや境遇、能力や適性などに応じてきめ細かく配慮して仕事を与え指導をしてきたのだろうかと疑問に思いました。当社の70人ほどの社員は一人として同じ人はいません。当社の多様な人たちが働きやすい職場づくりを考えなければいけないと思います。」と書きましたが、今回「そばかす」を観て、人は一人として同じ人はいないのだと、改めて思わされました。

 

これは、私が尊敬する中村天風師の考え方「絶対積極(ぜったいせつぎょく)」に通じるとも思いました。自分を他人と比べる必要はない、目標にすることはあっても、自分は自分で進んでいけばよいのです。

観終わって、エレベーターの中で一緒になった中年の男性に「良い映画でしたね」と声をかけたところ、「最後のシーンで、うつ病だった主人公の父親が治ってよかった。自分もうつ病だった」と言われました。映画はいろんなところで人の心に響くものなのだと思いながら駐車場に向かいました。

   

  

チョコレートな人々

2023.02.27

 先月のコラムのタイトルは「81+5=86」で、「これは去年1年間に観た映画の本数です。81は富山市総曲輪にあるほとり座で、5はJMAX THEATERとやまでの2本と、サンシップと高岡の会場とインテックビルです。」と書き出しました。

      

 今月のタイトル「チョコレートな人々」は、今年ほとり座で観た11本目の映画です。 

 観た順に、1月は「幕末太陽傳」、「金の糸」、「ホワイトノイズ」、「丹下左膳余話」、「ケイコ目を澄ませて」の5本で、新型コロナウイルスに感染して2本見損ないました。

      

 2月は昨日18日まで、「パリ・テキサス」、「都会のアリス」、「さすらい」、「まわり道」、「よだかの片想い」、「はだかのゆめ」、そして「チョコレートな人々」の7本ですが、今日はこの後、高志の国文学館で「伊豆の踊り子」、その後ほとり座で「冬の旅」を観ます。23日と26日も1本ずつ予定していますので、今月はほとり座で9本と他の会場で1本、先月のタイトル風に書けば、10+1=11です。

      

 今年になって観た映画は、洋画が7本、邦画が9本の16本ですが、つまらなくて「時間を返せ!」と言いたくなった「はだかのゆめ」以外は、それぞれ心に残る映画でした。洋画では、同じ監督が作った三部作「都会のアリス」、「まわり道」、「さすらい」がストーリーの面白さと俳優の演技に魅了されましたが、邦画では、左の頬に痣がある大学院生の女性の恋を描いた「よだかの片想い」と、耳が聞こえない女性プロボクサーが主人公の「ケイコ目を澄ませて」、そして、当初は観る予定に入れていなかった「チョコレートな人々」の3本が特に良かったです。

      

 「チョコレートな人々」のストーリーはチラシを引用すると、「愛知県豊橋市の街角にある「久遠チョコレート」。世界各地のカカオと、生産者の顔が見えるこだわりのフレーバー。品のよい甘さと彩り豊かなデザインで、たちまち多くのファンができました。(中略)代表の夏目浩次さんたちスタッフは、彼らが作るチョコレートのように、考え方がユニークでカラフル。心や体に障がいがある人、シングルペアレントや不登校経験者、セクシュアルマイノリティなど多様な人たちが働きやすく、しっかり稼ぐことができる職場づくりを続けてきました。 (後略)

        

 この映画をぜひ観るようにと勧めてくれたのは、ほとり座のプログラム編成責任者の樋口裕重子さんです。観終わって、樋口さんに勧めてもらってよかったと思い、社員に対するこれまでの私の考え方を反省しました。

      

 「チョコレートの人々」を観て、当社ではこれまで、社員の性格や人間性、生い立ちや境遇、能力や適性などに応じてきめ細かく配慮して仕事を与え指導をしてきたのだろうかと疑問に思いました。当社の70人ほどの社員は一人として同じ人はいません。当社の多様な人たちが働きやすい職場づくりを考えなければいけないと思います。富山市の新庄にも久遠チョコレートの店があるとのことなので、ここでチョコレートを買い、食べながらみんなで話し合いましょう。

81+5

2023.01.25

 81+5=86。これは去年1年間に観た映画の本数です。81は富山市総曲輪にあるほとり座で、5はMAX THEATER とやまでの2本と、サンシップと高岡の会場とインテックビルです。 昨年10月のコラムで、同じ作品を初めて2回観た「こちらあみ子」について書きましたが、今年初めてほとり座に行ったとき、帰り際にほとり座のスタッフの女性から、壁に貼り出された昨年1年間に上映されたすべてのチラシの縮小版の中でどれが一番良かったかと聞かれ、即「こちらあみ子」と答えました。

      

 10月のコラム執筆後にも多くの映画を観ました。古い映画では、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ共演の「ひまわり」、地下鉄パリ駅で主人公の5歳の女の子が「ミシェル、ミシェル」と叫ぶ声が耳に残った「禁じられた遊び」、フランスの個性派俳優ジャン・ポール・ベルモント主演の「勝手にしやがれ」や「気違いピエロ」などを観ました。

      

 アフガニスタンで銃撃で亡くなった中村哲さんのドキュメンタリー「荒野に希望の灯をともす」では、医師でありながら土木を勉強し灌漑用水を建設したことを知り、素晴らしい人であったと尊敬の念を深めました。

      

 「LOVE・LIFE」は、連れ子が風呂で溺死したことから人生が変わっていくという物語で主演の木村文乃の演技がとても良かったです。

      

 「1640日の家族」は、生後18カ月で里子となり受け入れ先の両親や兄弟と幸せに暮らしていたシモンでしたが、4年半を過ぎたころ実父が一緒に暮らしたいと申し出るというストーリーで、実父とシモンが仲良く歩いていくラストシーンが印象的でした。同じ日の午後に観た「グッド・ナース」は、巧妙な手口で患者を行く先々の病院で突然死させる男性看護師と、彼と公私ともに心を許していた女性看護師が、彼に不信を抱いて自白させる場面に、なるほどと感心しました。

      

 12月にはほとり座で、前述のジャン・ポール・ベルモントの映画など11本観ました。今年観た映画で3本の指に入ると日記に書いたのが「ギルバート・グレイブ」で、18歳の知的障害の弟と過食症で超肥満の母親を世話する雑貨屋で働くギルバート、彼がトレーラーで祖母と旅する自由な娘に出会い、自分の人生を見つめ直すことになるという映画です。そして12月30日に観た「キンキーブーツ」も1年の最後を締めくくるにふさわしいミュージカル映画でした。父親の突然の死により倒産寸前の靴工場を相続した男が、女装でパフォーマンスを行う男性のために、かかとが折れないハイヒールを作り成功するという話。日記には、「予想していたよりずっと面白かった。ハラハラドキドキした」と書いていました。

      

 なぜこんなにも映画にはまるようになったのかですが、長男が営む民芸店「林ショップ」で週に1回店番をしてくださる女性が、ほとり座のプログラム編成責任者で、翌月のスケジュール表を送ってくださるからです。そこに書かれている作品の概要を読み、観たいと思う映画に〇をつけ観るのですが、めったに観なければよかったという作品には当たりません。

      

 映画は、時代を超え、国や地域を超え、常識を超え、性差も超えます。何か暗いと感じながら観ている映画でも、ラストがハッピーだとホッとします。映画が終わり、会場が明るくなって現実に戻るときの充実感を味わってみませんか