最近の新聞を読んでいて、目にするたびに嫌な感じがするのが、「働き方改革」と「人づくり革命」です。
これまでもそうでしたが、政府が看板政策としてこのようなスローガンを掲げること自体、私には、何かしら国が「右向け右!」と一つの方向に国民全体を引っ張っていこうとする意図が感じられ、生理的に反発してしまうのです。「一億総活躍社会」も嫌な感じがしましたが、今回の「働き方改革」と「人づくり革命」には、まず「改革」とか「革命」といった文字にゾッとしました。特に革命には、ルイ16世が処刑されたフランス革命、ニコライ2世とその家族全員が射殺されたロシア革命、そして多数の人命が失われた中国の文化大革命と、血生臭さを感じてしまうのです。
しかし、改めて「革」という漢字をデジタル大辞泉で調べたら、訓読みでは「かわ」で「皮」と同語源で、音読み<カク>の③に、「たるんでだめになったものを建て直す。あらためる。『⇒革新・⇒革命・⇒沿革・⇒改革・⇒変革』」とありました。音読み<カク>の①に、「動物の皮から毛を取り去り、陰干ししたもの。かわ。」とあるので、ここに血のにおいを感じるかなと思いましたが、それは“こじつけ”というものでしょうね。
そこで、私も、「改革」や「革命」に感情的に反発しないで、まずは「働き方改革」とは、何を目指すものなのかとインターネットで検索し、以下の解説にぶつかりました。
「生産年齢人口が総人口の減少を上回るペースで減少し、労働力不足が深刻化しつつある日本。生産力低下による国の衰退を防ぐために、政府がいよいよ本腰で労働力不足の改善に力を入れ始めています。安倍首相を議長とする『働き方改革実現会議』では、議論のテーマとして以下の9つを挙げており、中でも特に「長時間労働の是正」と「正規・非正規間の労働格差の是正」を重要視しています。労働力不足を改善するためには、①出生率の増加(労働人口を増やす)②女性・高齢者の就職推進(働き手の幅を拡大する)③一人ひとりの労働生産性の向上(少ない労働人口のままでも生産性を保つ)が不可欠であり、そのために解消すべき最重要課題が非正規労働者の待遇改善やワークライフバランスを目指した長時間労働の是正なのです。」
なるほど、残業時間規制や週休2日制が声高に叫ばれるはずです。しかし、ワークライフバランスを目指した長時間労働の是正のためにやるべきことの一つとして示されている「一人ひとりの労働生産性の向上」は、企業経営においては、長時間労働の是正のために行うのではなく、企業が成長発展するために当然行うべきことであり、行ってきたことです。生産性の向上がないままに残業を減らし週休を増やせば、成果が減り利益も減り、倒産への道を歩むことになりますし、生産性の向上がないままにそれまでと同じ成果をあげようとすれば、家に仕事を持ち帰る隠れ残業が増えるだけで、実質労働時間は減りません。
また、今ほとんどの建設業団体が、現場の土曜・日曜閉所を原則にして、週休2日定着を目指していることに関して書かれていた「一斉には休まない」というコラム(9月1日の建設通信新聞「建設論評」)を読み、その通りだと思わず心の中で喝采を送りました。「働く人の週休2日は確保するとしても、閉所にこだわることの是非は議論の必要がある」として、「鉄道に運休日はないし、宅配もサービスは維持した。建設業に限らず企業の本質は、社会や発注者の利便性や問題の解決を目的としたサービス業であり、経営が考えるべきは多様なステークホルダーの要請に応える柔軟さである。働き方の閉塞状況を突破する第一歩においても『一斉に休まない柔軟さ』が必要である」と書かれていたのです。
働く人の健康と働き甲斐、そしてサービス業という企業の本質の両方を達成するには、生産性の向上が不可欠です。今月の朝礼で話しましたが、同じ時間で2倍の成果をあげても、半分の時間で同じ成果をあげても、生産性は2倍です。社員の皆さんは、後者の考え方で仕事に取り組んでください。そのためになすべきことはたくさんありますが、まずはそれぞれが取り組む仕事の目的を明確にし、事前にシッカリ段取りし、スケジュールを立て、時間内に確実に仕上げるため、チェック、確認しながら仕事に取り組むことを考えることです。これだけで、確実に生産性はあがります。
「働き方改革」という政府の号令に右往左往するのではなく、人間として、また企業として、常に改革し成長し続けたいと思います。