「こちらあみ子」

2022.10.26

 私は、1階に地場もん屋総本店が入っている総曲輪のウィズビルの4階にある映画館ほとり座で、毎月映画を観ています。観る映画は、ほとり座から毎月送られてくる予定表に書かれている、その月に上映される全ての作品についての100文字ほどの解説を読んで決めています。

      

 これまでに観た映画は数百本になるかと思いますが、最近観た映画で良かったのは8月に観た「長崎の郵便配達」です。この映画は『ローマの休日』のモチーフになったといわれるタウンゼンド大佐と、長崎の原爆被爆者谷口稜曄の出会いに端を発するドキュメンタリーで、大佐の娘イザベル・タウンゼンドが、父の著書『THE POSTMAN OF NAGASAKI』を基に長崎を訪れ、父の足跡を辿りながら、父と原爆被爆者の谷口稜曄が願った平和への思いを紐解いていく姿を映しだす映画です。悪かったのは上映時間が205分で、料金もシニアでも2,000円の「わたしのはなし部落のはなし」というドキュメンタリー作品で、同じような場面が繰り返され時間とお金の無駄だったと思います。

      

 今月は既に連続5日間に6本観ましたが、さっぱり分からなかったのは「シャンタル・アケルマン映画祭」と冠した5本の映画の内の「私、あなた、彼、彼女」です。解説には「アケルマン自身が演じる名もなき若い女がひとり、部屋で家具を動かし手紙を書き・・・」とあったので観た映画でした。

      

 あくまでも個人の感想ですから、良かったと思う作品もあれば悪かったと思う作品もあって当然とは思いますが、良い映画だったと思って、初めて2度目の足を運んだ作品が9月に観た「こちらあみ子」です。

      

 この映画は、芥川賞作家・今村夏子のデビュー作を映画化した作品で、主人公は、広島に暮らす小学5年生のあみ子で、少し風変わりな彼女のあまりにも純粋な行動が、家族や同級生など周囲の人たちを否応なく変えていく過程をあざやかに描き出す(パンフレットより)というものです。主人公のあみ子を演じるのは、応募総数330名のオーディションの中から見出された大沢一奈(おおさわかな)さんですが、きりっとした眼、チョット太い眉、上向き加減の鼻と忘れられなくなる顔立ちです。映画の内容は書きませんが、観終わって少し疑問に思ったのが、お母さんが実母ではないのかなということです。これは「あみ子さん」と「さん」付けで話しかけるところからの想像です。もう一つ確認したいと思ったのが最後の浜辺のシーンで、少し離れたところを行く何艘かの小舟を漕いでいる人の顔です。ぼやけたような顔なのです。そこで観終わってからパンフレットを買いました。母親が継母だとは書いてありませんでしたが、最後の船の人たちはオバケだと分かりました。それは、あみ子がさまざまな霊と交信できると書かれていて、だから「おばけなんかいないさ」と歌っていたのでした。

      

 パンフレットの解説を読んでますますこの映画が好きになりました。DVDが来年2月に発売されると知り、早速ネットで注文しました。3度目を観るのが、今から楽しみです。

      

 ちなみに「こちらあみ子」の「こちら」は、誕生日にお父さんに買ってもらったおもちゃのトランシーバーに向かって話しかけている「応答せよ、応答せよ、こちらあみ子」からのものです。