1月のコラム「趣味は読書」は、「わたしは、自分の趣味は仕事と読書と映画鑑賞だと思っています。映画鑑賞については、昨年の12月のコラム『126』で、昨年ほとり座で観た映画126本について書きました。読書については、昨年10月のコラム『読書の秋』と11月のコラム『井上ひさし』で書きました」と書き出しています。
昨年8月の「映画はほとり座で」では、これまで観た映画で印象に残った作品について次のように書いています。「どうしてももう一度観たいと思って1週間の間に2回観た『こちらあみ子』、今年2月に観た、孤独を抱えながら生きる男女が、かけがえのないパートナーを見つけようとする姿を描いたフィンランドのラブストーリー『枯れ葉』、そして先日観た『東京カウボーイ』や、笑福亭鶴瓶も出ていた『あまろっく』、外国映画では、オードリーヘップバーンの『ローマの休日』や、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの『ひまわり』など、観てよかったと思った作品が圧倒的に多いです。」
さて、今年もせっせとほとり座に通っています。1月は11本観ましたが、2月は8本観ます。2月11日の祝日に2人の孫と一緒に観た「ロボット・ドリームズ」、帰り際に2人とも泣いていました。ラストシーンが切なかったようです。
この2か月で最も面白かったのは、今年最初に観た「侍タイムスリッパー」です。この映画は、3月15日~3月21日にアンコール上映します。2月7日の北日本新聞には「時代劇に愛を込めて 斬られ役60年、峰蘭太郎さん(黒部出身)『侍タイムスリッパー』出演」という記事が載っていました。アンコール上映は、わたしがこれまで経験したことがありません。社員の皆さんにお薦めです。
最も心に残った映画は、2月16日(日)に観た、表題の「お坊さんと鉄砲」です。チラシから概要を引用します。
時は2006年。国民に愛された国王の退位により、民主化へと転換を図ることになったブータンで、選挙の実施を目指して模擬選挙が行われることになりました。周囲を山に囲まれたウラの村で、その報せを聞いた高僧は、なぜか若い僧に銃を手に入れるように指示します。時を同じくしてアメリカから“幻の銃”を探しにアンティークの銃コレクターがやって来て、村全体を巻き込んで思いがけない騒動が持ち上がります・・・。
長編映画監督デビュ-作の「ブータン 山の教室」(’19)が世界中でサプライズヒットとなったパオ・チョニン・ドルジ、待望の監督第2作。前作では秘境ともいえる地で、伝統を守りながら生きる人々の暮らしを活写しつつ“学ぶ”ことによって未来は切り開かれていくのだと示した監督が、今回モティーフに選んだのは「選挙」。初めての選挙によって“変化”を求められ戸惑う村の人々の姿を、前作同様、温かい眼差しと飄々としたユーモアで紡ぎながら、本当の幸せとは何かを、観る者に問いかけます。
わたしは予告編で、若い僧が鉄砲を担いで道を歩いているところへ、銃コレクターが車で追いかけてくるシーンを観て、面白そうだと予定に入れましたが正解でした。面白いというより、考えさせられる映画でした。
Google Chromeでブータンを検索すると次のように書かれていました。南アジアにあるブータンは、発展途上国ながらGNH(Gross National Happiness:国民総幸福)が2013年には北欧諸国に続いて世界8位となり、“世界一幸せな国”として広く知られるようになりました。GNHは1972年、第4代のジグミ・シンゲ国王によって提唱され、GDP(国内総生産)やGNP(国民総生産)ではなく「国民の幸福は経済成長よりも重要」との考えのもと生まれました。国民が皆一様に「雨風をしのげる家があり、食べるものがあり、家族がいるから幸せだ」と答える姿が報じられました。
観終わって、この映画のパンフレットを買い求めました。監督へのインタビューで、監督は、「GNH(国民総幸福)のような概念や、『無垢』といった資質を尊重することが、私がブータンの物語を世界と分かち合おうとしている理由です。」と語っていますが、やはりGNHを意識していたのだと分かりました。そして、仏塔の土台を作るために掘った穴の中に銃を投げ込むラストシーンになぜか涙が出ました。
パンフレットに書かれたエッセ-の一つにこんな文章がありました。ブータンで武器といえば、まっさきに思いつくのは弓矢か刀であるはずです。それなのに、お坊さまが考えた「争いの象徴」が「銃」であったのは、「海外から入ってきた争いの種」として「選挙」と「銃」を重ねて見たからかもしれません。
この文章で、「お坊さまと鉄砲(The Monk and The Gun)」という映画の題の深い意味を知りました。そしてわたしの涙が、争いの象徴の銃を放棄したことに共感したからだと思いました。
私が尊敬する中村天風師の教えは、人間として生まれてきたからには「積極的に生きようではないか」、苦しいことがあったからといって「下を向かずに前を向くべき」というポジティブ思考ですが、ブータンの国民の生き方にも、中村天風師の教えと相通じるものを感じました。
読書も映画も、わたしの成長のために欠かせないものだと、改めて思いました。